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第八章 X−001VS警官


 三谷たちはカラオケBOXから今までのことをじっくりと話した。
「ほぅ……信じがたい話だが公民館に転がっているものを見ると認めざるを得んな」
 とあごを触りながら野田が言った。
「俺たち、どうなるんですか?」と直樹が真剣な顔で聞いた。
「少年院行きですか?」と花木も心配そうな顔で聞いた。
 沖野も、
「櫻井はハム工場行きですか?」とまじめにこたえた。
 櫻井は、沖野の〈まじめ〉にこたえるべく、まじめに殴りまくった。
「テメェもクリキントンになりてぇのか?」と言うと右で沖野を殴った。
「それともクリようかんか?」と今度は、左で沖野を殴った。
 どうやらマジでキレているようだ。
 櫻井の眼からは、すさまじい殺意が感じられた。
「櫻井、その辺にしとけ」
 と三谷が止めた。
「ちっ……」
 わかったわと案外あっさりと殴るのをやめた。
「とりあえず続きの話は署で聞こうか」
 と、きっぱりと野田は言った。
 みんなは、しぶしぶパトカーに乗り込もうとした。
 そのとき。
 「うわあぁぁぁ」と言いながら警官の一人が走ってきた。
「どうした」
 と野田がその警官に聞くと、
「アイツが……あぁぁ……」
 と言いながらその場に崩れそのまま気絶してしまった。
「まさか……」
 と野田は言いながら、今警官が出てきた公民館のドアを見つめた。
 すると中からX−001が、「うおぉぉぉ……」と言うとともにドスンドスン、と足音を立てながら、ゆっくりと出てきていた。
「まずい。君たち、下がっていなさい」
 と野田は冷静に言い、腰から銃を取り出し、X−001に向かってズドンズドン、2発の弾を撃ち込んだ。
 その弾は、X−001の左肩と右のももにあたった。
 それを合図にそこにいた全ての警官は弾を四方八方からX−001に打ち込んだ。
 銃声がやみ、一瞬あたりは静まり返った。
 最初に口を開いたのはアッキーだった。
「お、終わったのか?」
 と言った。
 しかし、その言葉を言い終わらないうちに、
「ぐおぉぉぉ……コ……ロ……ス」
 とこもるような声を出しながらX−001は動き出した。
「く……くそ、もう弾がない」
 と今度はかなりの同様を見せながら野田は言った。
 それに続いて、
「こちらももう弾がありません」
 とそれぞれのパトカーから声が上がった。
「くそっ、こうなったら逃げるしかない。おい!! お前ら、今すぐ逃げるぞ。君たちもはやくパトカーに乗りなさい」
 と野田が言うや否や、2台のパトカーにそれぞれ警官が乗り込んだ。
 気絶していた警官も先ほど起きだし、パトカーに乗り込み始めていた。
「おい!! もう一人の警官はどうした!!」と車のドアを開けながら野田は中に入っていった警官に聞いた。
 しかし、その警官は、
「わかりません。しかし……」
 と最後のほうは言葉を濁して何も言わなかった。
「ええい、くそ」
 と野田はパトカーを降り、公民館に向かって走り出した。
 目の前にはX−001が立ちはばかっている。
「野田警部!! 戻ってください」
 と警官が大声で言ったが野田には、聞こえない。
「部下は、まだ死んだと決まったわけじゃない!!」
 とX−001にまっすぐ突き進む野田。
 だが、X−001は立ち止まったまま動かない。
「……これは」
 と櫻井が何かに気づいた。
「どうした?」
 と三谷。
「アイツの背中を見ろ」
 と櫻井は、X−001を指差した。
 みんなの視線がX−001に集中した。
「なんだ……あれは」
 と三谷は唖然とした。
 X−001の背中から無数の触手が出てきたのだ。
 ウニュウニュとした、紫色で先はとがっていた。
「うわっキモッ」と花木が口を押さえながら言った。
 それにも動じず野田は突き進んだ。
 ……がX−001の触手が野田を捕らえたのだ。
「ぐおっ……」と触手は野田の体を容赦なく、締め付けている。
「おい、このままだと野田のおっさん死んじゃうぞ」と軽く櫻井が言った。
「ここは櫻井を餌に……」と沖野が言い終わる前に櫻井は沖野を殴っていた。
「こうなったら」と花木が気合を入れていった。
「なにかいいアイディアがあるのか?」と櫻井が聞いた。
 花木はにやりと笑い櫻井の背中を思い切り蹴飛ばした。
 すると櫻井は、よろめきながら前へ進まされ、パッと目の前を見るとX−001が堂々とたっていた。
……その距離、わずか50センチ。
 櫻井は、無言のまま冷や汗をたらしていた。
 すると
「さっちゃんがピンチだー」と花木がが叫ぶ。
 櫻井は、また思った(お前がこの状況に持ち込んだんだろうがぁ)と……
 櫻井はなんとか、この場を逃れようと、X−001の目の前で考えていた。
「え〜と……おはこんばんにちわ……」とX−001に櫻井は言ったが、当然のごとくX−001には理解できなかった。
 櫻井は次の一手を考え始めた。
「ここは、実力行使しか……」と櫻井はひそかに言った。
 櫻井は覚悟を決め、X−001に殴りこんだ。
「死ねやぁー」と殴りかかろうとした瞬間、速攻でX−001に殴り飛ばされ、沖野めがけて吹っ飛ばされた。
 櫻井は勢いよく沖野に突っ込み、沖野もろとも吹っ飛んだ。
「いってぇ……なにしやがるコノ、デブが」といつものごとく切れた沖野。
「うるせぇ、俺のせいじゃねぇ」と櫻井はやぶれかぶれに沖野を殴った。
「まぁまぁ。いったい原因は何?」と花木が横から言った。
「そりゃ、テメェだ!!」と櫻井と沖野は、口をそろえて怒鳴った。
 すると三谷が
「おい、櫻井、花木、ついでに沖野」
「ついでとはなんだ!!」
「オマエら、野田のおっさんのこと忘れてるだろ」と言った。
 そう、野田警部は、未だにX−001の触手に締め付けられていたのだ。
「ヤッベ……素で忘れてたわ」と櫻井。
 と、また、沖野が
「うわっバカじゃねぇのこのデブ」と言った矢先”ドカッ”と櫻井は、沖野を殴った。
「オメェはホント、懲りねぇやつだな」と櫻井はあきれた。
「てか、まあ、野田のおっさんを助けないとな」とのんきに櫻井は言った。
「なにか策はあるか?」と三谷がみんなに聞いたが返答が無い。
「どうすればいいんだ」と直樹が悩んでいると、警官4人が三谷たちの目の前に立った。
「ここは、警官の仕事だ」と警官が言ったが手は震えていた。
「お前たち……やめるんだ」とかすれた声で野田が言ったが
「いいえ、今回の命令は、聞けません」と警官はきっぱりと答えた。
「いくぞ!!」
 と一人の警官が言うと、パッと警官全員がX−001に向かって走り出した。
 すると、警官4人はX−001を四方向に囲んだ。
「おお、すげぇ」と花木は、目を光らせていったが一人の警官が囁いた。
「囲んだはいいが、お前ら銃はあるか?」と言うと
「ない」
「あるけど弾がない」
「忘れてきた」と警官はみんな同じような返答だった。
「じゃあどうすんだよ!?」と一人の警官が頭を抱えて言った。
 それを見ていた櫻井は
「……ひょっとしてあの警官方は、俺たちよりバカ?」と言った。
「そうっぽいな」と三谷が同感した。
「こうなったらデッドオアアライブだ!! 行けー」と一人の警官が命令を出すと、他の警官もX−001に向かっていった。
「ああいう大人にはなりたくねぇな」と櫻井が呟いた。
「……そうだな」と三谷はまた同感した。
 警官四人は、武器を持たずにX−001に挑んでいた。
 「オラオラ!!」と必死にX−001のスネを蹴り続けているがX−001はビクともしていない。
X−001は「ジャマダ……」と叫び、警官一人がすごい勢いでパトカーに吹き飛ばされ、警官は頭から血を流し倒れた。
 すかさず櫻井がかけより脈を計った。
「……ダメだ、死んでる」と冷静にいった。
 だが残りの警官3人は攻撃の手を休めなかった。
「バカ! 逃げろ」と思わず三谷が口に出した。
 X−001は、一人の警官を踏み潰した。
 アッキーは流れる血を見て、目を手で覆い隠して
「オレ……グロテスクなの苦手……」と言った。
 すると沖野が
「クロいくせにグロイのが苦手なのかハハハ」と言って笑っていた。
 そして、すかさず三谷は
「こんなときにくだらんシャレを言うな」と沖野にグーで突っ込んだ。
「グァ!!」
 とまた一人の警官がX−001の爪により串刺しになって、残り一人になった警官はビビリ、腰が抜けてしまった。
「た……助けてくれぇ……」と警官は泣きながら言ったが、
「やめろ……うわあぁぁぁ」とX−001が首を切り裂いた。
 警官は、野田を残し全滅した。
「ちくしょう……部下が……部下が……」と今にも泣き出しそうな野田だった。
「野田のおっさん、こんなときにこそ冷静に、だ」と櫻井がいつものように(?)冷静に言ったが、野田は
「くそっ……部下をよくも部下を!!」と暴れだした。
「野田警部落ち着いて」と花木が言ったが、まったく野田の耳には入らなかった。
 いいかげんX−001も野田がうっとうしくなったらしく、脇にあった川に野田を落とした。
「まだだ!! まだ終わっちゃいねぇ」
 と野田はもがきながら言ったが、どうやら泳げなかったらしく、ブクブクと沈んでいった。
「おいおい警官なら泳げるようになっておけよ」と三谷があきれていった。
「俺でもちゃんと泳げるのによ」と櫻井が言うと
「オメェは泳いでるんじゃねぇ。ただ浮いてるだけだ」と沖野が小声で言うと櫻井は
「テメェはしばらく黙ってろ」と沖野に裏拳をくらわせた。
「オイ……来るぞ」と三谷がささやくとX−001はじわじわと6人に迫ってきた。
「こうなったらパトカーで逃げるぞ」と三谷が言うと
「車の運転なんてできんのか?」と櫻井が聞く。
「まかせろ!!」と三谷は自信たっぷりに言うとパトカーに乗りエンジンをかけた。
「さぁ、乗れよ」と三谷が手招きすると不安そうな顔をして櫻井が乗り込んだ。
「みんな、乗れ乗れ〜」と三谷が足をばたばたさせて言っていると、間違えてアクセルを踏んでしまった。
「うおぉぉぉ」と櫻井と三谷は勢いよく前進し、X−001に突っ込んでX−001とともに公民館に衝突、現場は静まり返った……。
「二人とも無事なのか?」と直樹が口を開いた。
 すると
「くそ、いてぇ……」と櫻井が顔を見せた。
 続いて三谷も
「いてて、唇切った」と言いながら顔を見せた。
「二人とも無事だ〜」とアッキーが大声で言った。
「よく無事だったな」と直樹。
「櫻井は肉で助かったんだろ」と沖野。
「だーまーれぇー!!」と櫻井は助走をつけ、沖野にとび蹴りを食らわした。
「おい、櫻井あれを見ろ」と三谷が先ほどのパトカーを指差していった。
 パトカーは燃料が漏れパトカーと公民館の間にX−001が挟まっていた。
 X−001は身動きがとれず暴れていた。
 〜P20 「直樹、オマエならどうする?」と三谷が聞くと
「とりあえず逃げる」と即答した。
「よっしゃ、じゃあ逃げるか」と三谷が言いながら他のパトカーを動かそうとしたが
「鍵がねぇ」とつぶやいた。
「自分の足で逃げるか……」と花木が言うと櫻井は嫌そうな顔をしたが、そうするしかなかった。
「いくぞ〜」と三谷が大声で叫ぶと六人は暗い道を走り出した。
 途中櫻井が息を切らせながら
「お……おい。どこまで行く気だ?」と言った。
「黙って走れ。あいつが動けるようになる前にできるだけ遠くに行くんだ」と直樹。
 そのころX−001はまだ身動きが取れなかった。
 だが、徐々にパトカーを押し、抜け出そうとしていた。

2006/05/16

第九章 コウ出現


「オ……オイ、ほんとにどこまで行く気なんだよ……」と櫻井があえぎながら言う。
「もうくたばるのか、さすがデブ」とすかさず沖野。
 しかし、今回ばかりは元気が出ず歯をくいしばることしか出来ない櫻井。
 それを見た沖野が(チャンス)と心の中で叫び
「デーブ。のろま。悔しかった追いついてみろ」と言いたい放題に言った。
 すると櫻井は突然、ドドドドドドという音を上げながら沖野に追いついて
「追いついてやったぞ」と言いながらゲスゲスと頭を殴り続けた。
「オイ、あほなことやってると体力なくなるぞ」と直樹が言う。
「そうだな」と言い櫻井は叩くのをやめた。
 するとやめると同時にまたも
「ハァハァ」と息を切らし始めた。
「なんだ、コイツ」と沖野が不思議そうな目で櫻井を見ながら言った途端。
「お〜い」とどこかから声が聞こえてきた。
「ん?」と言いながら三谷が辺りを見回すと前方に管理人こと〈コウ〉が手を振っていたのである。
「何やってんのこんなとこで?」とこうが笑いながら言った。
「……実はな……」と三谷が話し始めた。
 そのころX−001はもう少しで抜け出すことが出来そうになっていた。
 衝突したパトカーをバンバン叩きパーツを壊し、できるだけ軽くしようとしていたのだ。
 だが、叩けば叩くほど、パトカーの燃料がボタボタと漏れていく。
 X−001の周りには燃料が散乱している。
 そして、やっとパトカーが持ち上がるくらいの重さになり、X−001は片手でパトカーをどかした。
 X−001はゼーハーゼーハー言いながら立ち上がろうとした。
 そのとき地面にX−001の爪がすり、その鋭さと硬さから火花が散った。
 火花は燃料に引火し、火はどんどん燃え移りどかしたパトカーにまで引火し、すごい音を立てて大爆発をしたのだ。
 間近にいたX−001は吹っ飛びさすがのX−001も右腕を失ってしまった。
 その爆発音に気づいた三谷たち。
「今の爆発は……公民館か!?」と三谷が振り返った。
「だろうな。アイツがどじでもふんだんだろ」と櫻井が普通に言った。
 すると沖野が
「櫻井と一緒だな」と言い終わる前に殴られていた。
「いって……っとに何すんだよデブ」……ボコッとまた沖野は殴られた。
 さすがの沖野も 「ストップストップ……もうやめてくれ」と謝った。
「許す」と案外普通に櫻井は言ったが
「偉そうなんだよコノデブ」と沖野が口を滑らせた。
 それを聞いた櫻井は
「安らかに眠れ友よ……」と言うと櫻井は沖野の顔面にひじうちをくらわせたのである。
 なにかすごく低い音がして沖野は倒れた。
「えー! さっちゃんホントに殺っちゃったの!?」とコウが焦りながら言った。
「大丈夫だ。手は抜いておいた」とカッコつけて櫻井が言った。
 そう、沖野は死んだのではなく気絶したのだ。
「いくらなんでも気絶させるのもまずいだろ」と三谷が櫻井を責めた。
「沖野軽いしオレが担いでいけば問題ないだろ」と櫻井が軽々しく言うと沖野を担いだ。
「さ〜てまた逃走開始するか」と三谷が気合を入れなおした。
 が……
「コ……ロス……」とX−001がまた接近してきていた。
 その姿を見た櫻井は
「しつけ〜なぁアイツ。腕ねぇし」と言った。
「どうする直樹?」とまた三谷が聞くと、直樹は
「う〜ん……」と考え始めた。
「あ、そうだ」とひらめいた瞬間、コウが
「そこにマンホールがあるから下水に逃げよう。」と言った。
 それを聞いた直樹はコウをにらんだ。
 それに気づいたコウは直樹から目をそらした。
 こうしてコウと直樹の間に何かが生まれた。
 ライバル意識である。
「とにかく、下水にもぐるか」と三谷が言うとみんなはマンホールを開けて下水にもぐった。
 ――ここは、地球のどこかにある研究所 「うぅむ……あの7人ただのがきかと思いきや、なかなかやるではないか。X−001を何度も退けるとは……生きて返すわけにはいかんな……」と老いぼれた男が言った。
「博士! 例の実験体が逃げ出しました!!」と若い男が言うと
「X−001といい実験体まで逃すとは……」と老いぼれた男はあきれた。
 すると若い男が
「今すぐ捕獲しますか?」と聞くと、老いぼれた男は
「いや、いい」
「えっ?」
「実験体が逃げた場所は分かっている。くくく……あの7人はどうするかな」とにやりと笑った。

2006/05/23 up

 第十章に続く



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