Back  Contents  Top  Next
 
第十章 強敵、実験体パンツァータートル


 ――ここは薄暗い下水

「うえっくせっ」と三谷が言った。
「た、たしかに」と花をつまんで櫻井がいうと
「これからどうする?」と花木が聞いた瞬間
「しーーっ」と直樹が言った。
「どうした? 直樹」と三谷が小声で言うと
「静かにしてみ」とコウが言った。
 みんなが耳を済ませた。
 すると、ドスンドスンと地上からX−001の足音が聞こえた。
 みんなは息を殺した。
 ……だが!! バコンッと三谷たちの頭上からX−001の触手が姿を現した。
「うおっ!? なんちゅう〜触手だ」と三谷が言う。
「とにかくここから離れろ!!」と直樹が叫び7人は下水の奥へと進んだ……。
「ここまで来ればいいだろ」とハァハァしながら桜井が言った。
「ふ〜……びっくりした」とアッキーが後ろを向いて歩いているとアッキーは何かにつまずいて転倒した。
「いててて……」とアッキーがひざを押さえて言うと、三谷はアッキーのつまずいた何かをみて
「……おいっこれって……」と動揺して言った。
 櫻井もそれを見ていった。
「あー……死体だな」
 その死体は、白衣を着た男手来し方下が何かに噛み千切られていた。
「お〜お……またグロテスクな」と花木。
 ふと直樹が死体が持っているレポートに気づいた。
 直樹は恐る恐るそれを拾い読み始めた。
「只今実験体が一匹逃げ出した。実験体はオリジナルより数倍大きく見つけやすいが水中だと話は別。実験体は戦車より硬く重い注意せよ。 だってさ」
「実験体って何? どんなの?」とアッキーが言った。
「それも書いてあるな」と直樹が言うと
「読め」と強引に三谷が言う。
「どうやら実験体ってのは……カメらしい」と目を点にして直樹が言った。
「カ、カメ……?」三谷は耳を疑った。
「ああしかもアカミミガメらしいな」とレポートを見ながら直樹が言った。
「アカミミガメなら俺ん家でも飼ってるぞ。末吉って名前だ」と笑いながら言った櫻井。
 するといつの間にか目を覚ましていた沖野が
「ダセェ名前だな」とケチをつけた。
「オマエ起きてんなら降ろすぞ」と櫻井は沖野をドブ川に投げた。
 普通はジャブンとか言うのが水だが沖野を投げたときはコツン……といった。
「えっコツン?」と櫻井がどぶ川をのぞく。
 沖野が川からはい上がって
「川の中に何かいる……」と言った。
「まさか……」と櫻井は石を川に投げてみた。
 またコツンといい川の中から深緑色の甲羅が姿を現した。
 その甲羅は大型の車一台分はあった。
「なんちゅ〜デカサだ」と三谷が驚く。
 すると実験体は陸に上がってきた。
 その姿は戦車二台分もあった。
 甲羅のふちは刃物のように鋭くかなりどうもうだった。
「オイ直樹。こいつの名前は?」と櫻井が聞いた。
 直樹はレポートを見て
「え〜と”パンツァータートル”だそうだ」と言った。
 それを聞いた櫻井は
「へっ……パンツァーね……」とニッと笑った。
「さっちゃんパンツァーって何?」と花木が聞くと
「ドイツの戦車の名前さ」と鼻を高くして櫻井が言った。
 パンツァータートルの爪は地面に刺さるくらいの鋭さだった。
 タートルはノシノシと7人に近づいてくる。
「こりゃX−001よりヤバイかもな」と三谷が言う。
「だな。武器も包丁一本じゃな」と櫻井も言った。
「ヤバイよヤバイよ」とアッキーが泣きそうになった。
 すると櫻井が男の死体をタートルに投げた。
「ホラ食え」と言うとタートルは死体をむさぼり始めた。
「ナイス今のうちに逃げるぞ」と直樹が言うとまたひたすら走り出した7人。
 しばらく走ってコウが
「そうだ。下水から出ればいいんだ」と言った。
「よしそこにハシゴがある」とハシゴを指差し三谷が言う。
 アッキーが一番にハシゴに触ったそのときドカン! とまた上からX−001の触手が出現したのである。
 アッキーはビビッてハシゴから落ちたが三谷とコウが見事キャッチ。
「くそ……地上はX−001で下水は実験ガメ……まさに悪夢だな」とコウがつぶやいた。
 すると下水の置くから口の周りを血だらけにしたパンツァータートルが姿を現した。
「どうする!? 直樹」とあせって三谷が言った。
 さすがの直樹も何も思い浮かばなかった。
 すると櫻井が包丁を持ちタートルに投げた。
「チェストォーー!!!」
 包丁はまっすぐタートルの顔に飛んでいった。
 確実に当たると思いきやバクンッ……
 パンツァータートルはなんと飛んできた包丁を飲み込んだのである。
 みんなはボーゼンとしてしまった。
「まだ包丁持ってる?」と櫻井が聞く。
「ない……」とアッキーが答えた。
「じゃあどうすんだよ!?」と櫻井がわめく。
 すると直樹が
「こうなったらアレしかないな……」と言うと
「アレ?」と三谷。
「みんな川に飛び込めー!!」といきなり言うと最初に川に飛び込んだ。
 続いて三谷・コウ・花木と飛び込んでいった。
 アッキーもしぶしぶ鼻をつまんで飛び込んだ。
 だが沖野は
「こんなどぶ川に入るなんて俺は嫌だ!!」とダダをこねたが
「ならカメに食われるか?」と櫻井が冷静に聞いた。
「うるさいなデブ」と言い放った沖野。
「ふ〜ん……そ」と櫻井は冷たく言い後ろを向いた。
 すると突然櫻井が振り返り
「とっとと行けや〜!! ボケェ!!」と怒鳴り沖野を川に蹴り飛ばした。
 ドッボーン……沖野は川に沈みしばらくして浮き上がってきた。
「テメェ殺す気か!?」と沖野が怒鳴る。
 すると櫻井は
「あ〜? テメェ俺に殺されるのとカメに食われるのどっちがいいんだ?」と言った。
「桜井に殺されるぐらいならカメに食われるほうがマシだ」と沖野が言う。
「あっそ」とまた冷たく櫻井は言い
「さて買ったばかりのジャージ汚したくねぇが行くか〜」と櫻井が言うと豪快に川に飛び込んだ。
 7人はドブ川にぷかぷか浮かび
「今気づいたが」と直樹。
「んっどうした?」と三谷が聞くと
「カメって陸だからノロいけど水中だと……」と身震いして直樹が言った。
 すると――ドボンッ――パンツァータートルはどぶ川にもぐった。
「袋のねずみだね。コリャ」とコウが言うと
「うわぁぁぁぁブクブクブク……」と花木が水中に引き込まれたのだ!
 すると櫻井は
「うぉぉ!! 花木ぃお前だけは俺が必ず助けてやる〜!!」と言うと、水中にもぐった。
「櫻井手を貸してやる」と三谷も水中へもぐった。
「ヴァナギードゴダ〜(花木〜、どこだ〜?)」と水中で櫻井が言った。
「ヴォイビィダゾ(おい、いたぞ)」と水中で三谷が指差し、言った。
 パンツァータートルは水中で花木の袖をくわえ、窒息させようとしていた。
「ヴァガガメェ〜、ヴァナギヴォバナゼェ〜(バカガメ〜、花木を放せ〜)」と  言うと櫻井はカメの首にまとわりついた。
 タートルは頭をバタバタさせたが、櫻井は離れなかった。
 しかもその拍子に、タートルは花木を放してしまったのである。
 水中に放り出された花木を、見事に三谷がキャッチして水面へと向かった。
 流石の櫻井も力尽き、水中で放り投げられた。
「プッハァー」と三谷と花木が水面に顔を出した。
「おっ無事だったか」と直樹。
「あのデ……櫻井はどうした?」と沖野が聞くと
「まだカメと戦ってやがる」と三谷が言うとまた水中へもぐった。
 そのこの櫻井はまだタートルと争っていた。
 水中でタートルが櫻井に突進したが、櫻井は紙一重でよけた。
 が、微妙に甲羅が右腕にかすったらしく、櫻井は右腕から大量の血を流していた。
 するとタートルは櫻井をぎゅっと抱きしめ、頭から食べようとしていた。
「ビィ、ビィギガ……(い、息が……)」と櫻井は意識がもうろうとしていた。
 三谷は水中で
「ザクラビィ〜ドォゴダ〜?(櫻井〜どこだ〜?)」とキョロキョロしていった。
 すると三谷は意識がもうろうとしてカメに抱きしめられている、哀れな櫻井を発見した。
「ヴォーイ、ザクラビィー、メボォザマゼー(おーい、櫻井ー、目を覚ませー)」と言ったが今の櫻井には聞こえない。
 すると
「オギノガヴァガダッデェー(沖野がバカだってー)」と三谷がうそを言った。
 突然目を大きく開いて、櫻井が目を覚ました。
「ダァレェガァヴァガダッデェー!(誰がバカだってぇー!)」と水中で桜井が  叫び、パンツァータートルの右目をくりぬいた。
 パンツァータートルはもがき、櫻井を放した。
 すると三谷が櫻井を引っ張り、水面へ引き上げた。
「ハァハァ……死ぬかと思ったわ」と櫻井が大きな口を開け言った。
「とにかく陸へ上がれ」と直樹たちが手招きをしている。
 三谷と櫻井は、よっこらしょっと陸へ上がった。
「お前らみんな無事か?」と血だらけの櫻井がいった。
「オマエが無事か?」と6人全員に突っ込まれた櫻井……
「あ〜……新品のジャージがこんなに濡れて……」とジャージを絞りながら櫻井が愚痴る。
「そんなことより櫻井。早くここから離れるぞ」と直樹が言うと川からどんぶら こ、どんぶらこと桃が……じゃなくて人が流れてきた。
「ね〜。人が流れてるぞ〜」と花木が指差して言うが
「無視しろ」と三谷。
が櫻井とコウはその人を引き上げた。
「あっ、この人は」とアッキーが気づく。
「ああ、野田のおっさんだな」と冷静な櫻井。
「生きてんのか?」と三谷が野田のおっさんの心臓に耳を当てる。
「あ……生きてるわ」と三谷が言ったが
「どうすんだ? 捨てるのか?」と櫻井が聞くと
「捨てる」と即答で三谷が答えた。
「待て、待て、待て!! あんたら人を見殺しにする気かい!?」とコウが突っ 込む。
すると三谷が
「だってこのおっさん嫌いだもん」と突然言い出した。
――と野田がむくっと起き上がった。
「おはよーございます。野田警部」とスマイルで花木が言った。
「ここはどこだ?」ときょろきょろして野田がいうと
「ここは下水です」ときっぱり直樹が言った。
すると野田は立ち上がり、はしごを上り始めた。
すると直樹が
「あの〜……地上に出ないほうが……」
「なぜだ?」と言うと三谷が
「直樹、行かせてやれ」とにやけて言った。
野田は首を傾げたが再び上り始めた。
するとバコンッとX−001の触手が野田の左肩をかすめた。
「むっ!?」と野田は驚き、はしごから落ちたのである。
「まだ死んでなかったのか」と左肩を押さえて野田が言った。
見たにはニヤニヤしている。
「……ここに引きこもり救助を待つか」と野田は座り込んだ。

「それがですね〜、そうも言ってられないんですよね〜」と直樹が言うと、パン ツァータートルが川から這い上がってきた。
パンツァータートルは右目から血を流し、怒っている様子だった。
「何だこのカメは。バカデケェな」と野田が驚く。
タートルは見た目とは裏腹にサイと同じスピードでタックルしてきた。
だがそんな攻撃はあっさり、簡単によけられるのだった。
タートルが壁に衝突すると壁は粉々に砕け散った。
「なんて威力だ」と三谷があせる。
「やっぱ勝てんか。武器もねぇし」と櫻井が弱気になった。
すると
「ぎゃぁぁぁぁぁ」とパンツァータートルが低い声で叫んだ。
「うぉっうるせぇ。てかしゃべれるんかカメ」と櫻井がふざけ半分で言った。
「オイ櫻井。おいてくぞ」と三谷が言い、櫻井と三谷以外の人間はもう近くには いなかった。
「お〜い、みんなオレを置いていくな〜」と櫻井も走り出した。
……もう何時間走ったのだろうか。
いや、まだ30分しか走っていないが
「お、おい、カメがいねぇぞ」と櫻井が振り返った。
「よし、この辺で休憩にするか」と直樹が腰を下ろした。
「……殺人鬼に人食いガメ……ああ、どうなってんだよもう」と直樹が愚痴る。
「それよりこのおじさん誰?」とコウが聞く。
「ああ、それね。それは野田警部って言って、役に立たないおっさんだ」と三谷 が言う。
「役に立たないとは失礼な」と野田が反論するが
「X−001の触手につかまれてギャーギャー暴れて、挙句の果てに川に落とさ れたのはどこのどいつだ?」とまた三谷。
「……何も言えん」と野田は負けを認めた。
三谷は勝ち誇ってケラケラ笑っていた。
すると……ピキッペキッパリッと音が聞こえた。
「なんだ? この音は」と三谷が言うと
「……上だ!」と櫻井が上を見ていった。
次の瞬間……ドッカーーン!!! 「くそったれが……」と櫻井。
X−001はコンクリートを破壊して、下水に進入してきたのである。
触手をウニュウニュさせ、X−001はじわじわ迫ってくる。
「ろくな武器も無いのに戦えるか」と沖野が言うと
「オマエは武器あってもたたかわねぇだろ」と櫻井がささやく。
「うるせぇな、デ……ボコッ」沖野はまた叩かれた。
するとX−001の触手攻撃が来た。
「全員伏せろ!!」と野田が叫ぶと、全員頭を抱えてしゃがみこみ、X−001 の触手は横の壁に当たり大きな音を立てて崩れ落ちた。
「……おい、これを見ろ」と崩れ落ちた壁を見て三谷が言う。
壁の向こうは空洞だった。
櫻井は何か不審に思い始めた。
さっきのパンツァータートルで開いた壁の向こうも空洞だったし、下水で死んで いた白衣の男……。
この下水には何かあるとうすうす気づき始めた櫻井だった。
そんなことより今は目の前にいるX−001をどうするか考えなくてはならない 。
そのとき――ジャパーン――と川にパンツァータートルの姿が見えた。
「X−001を川に落とせば……」と直樹がひらめいた。
「そうか。川に落とせばカメが食うかもしれないな」と櫻井も気づくが
「俺はあいつに触るの嫌だぞ。2回も殴られたからな」と言った。
みんなはしばらく考え込んだ……。
するとそのとき沖野が叫ぶ。
「おい、はなせ、三谷。オイ、コラ」
「たまには役立てよ〜」
「だからって、やめ……うわーー!!」
三谷はX−001に向かって沖野を蹴り飛ばした。
沖野は仕方なく……いや、勇気を振り絞ってX−001の首にしがみついた。
「俺だってやるときはやるんだー」沖野はそう叫び、X−001とともに川に落 ちた。
すかさずパンツァータートルは水中にもぐっていくと、川が赤く染まった……。
「沖野が……」花木はその場に崩れ落ちた。
だが、悲しみにくれる暇も無くパンツァータートルが陸に上がってきたのである 。
「まだ分が悪い。逃げるぞ」 直樹がそう言うが
「嫌だ、こいつは沖野の敵だ」コウは鋭い目をして直樹に言った。
「あっそう……なら」
「なら?」
「オレにアイディアがあるが……賭けだぞ?」
「なんだってやるさ」
「フ〜ン……」そういうと直樹はにやりと笑った。
「で、何やるん?」コウは真面目な顔をして聞いた。
「ん、コウは目を閉じるだけでいいのさ」
「えっ?」
「とにかく目をつぶれ」
「……OK」コウは静かに目を閉じた。
直樹の笑顔はいっそう不気味になった。
「おい直樹……いったい何するんだ?」流石の桜井も心配になって聞いてみた。
「外からきかないなら中から攻撃するんだ」
「えっ……まさか」
直樹は助走を付けコウに思いっきりタックルをした。
「いってこい、コウ〜!!」
「ぐかぁ!!」
コウはパンツァータートルにつっこんだ。
「いてて……何するんだ直樹」コウは直樹をにらんだが直樹はニヤニヤ笑ってい る。
その目はどう見てもライバルをつぶす目だった……
「こ、怖いぞ、直樹」櫻井は引いた……
が、直樹は櫻井を無視してコウに話しかけた。
「頑張れよ〜コウ〜」
「がんばるって……うわぁぁぁ!!」
……バクン……コウはパンツァータートルに丸呑みにされたのだった。
「どうすんだよ、ダーちゃん」花木はおよおよしている。
「言っただろ?これは賭けだってな」直樹はかっこよく言った。
「コウ、大丈夫かな」アッキーが心配している。
「で、俺らは何するんだ?」三谷が直樹に聞く。
「カメを逃がさないようにする」
……みんなは引いた……
そのころコウは…… 「くそ〜……直樹のヤツめ」
パンツァータートルのいの中で愚痴っていた。
コウはキョロキョロ周りを見渡している。
胃の中はごみでいっぱいだった。
ふと、コウの目に光るものが見えた。
それは櫻井が投げた包丁だった。
「さっちゃんに感謝」コウは包丁を手に取った。
「とにかく刺してみるかな」……
外では、パンツァータートルのタックルをよけまくっていた。
「もう……だめ」アッキーがよろけた。
その隙にタートルはアッキーにタックルを喰らわせた。
「うわっ」アッキーはトラックに追突されたような勢いで吹っ飛んだ。
このままではアッキーは壁にぶつかって死んでしまう。
そのとき
「うおりゃ!!」
アッキーと壁の間に櫻井が立ちはばかった。
「ぐおっ」櫻井はアッキーをつかみ、背中から壁に突っ込んだ。
「いてぇ……足の感覚がねぇ」櫻井は背中を押さえながら言った。
もちろんうそだ。
またパンツァータートルはタックルしてきた。
ターゲットは櫻井だ。
「おい、オレ背中痛いからストップ、ストップ!」
パンツァータートルに人間の言葉は分からなかった。
まっすぐタートルは櫻井に向かってくる。
そのとき…… 「ぎゃぁぁぁ」タートルは突然叫びだした。
どうやら苦しんでいるようだ。
「そうか……コウが中で暴れてるのか」櫻井は悟った。
…… 「うおりゃ〜!!」
コウはタートルの胃をひたすら刺していた。
グサッ、グサッ、グサッ
「……心臓を刺せば……」
コウはひらめいたがここは胃の中だったので、どうするか考え始めた……
ピ〜ン…… 「しょうがない、やるか!」コウは胃に包丁を差し込んだ。
すると胃の壁を四角く切り取った。
「この調子で心臓へGo〜」
なぜかコウは一人でノリノリだった……
「カメを取り押さえろ!!」直樹が指差し叫んだ。
みんなは、コクッとうなずいたが、どうやればいいのか分からなかった……
そして再びパンツァータートルがタックルしてきた。
ドゴンッ……また壁を破壊する威力だ。
「早く取り押さえろ!!」直樹は怒鳴る……
「どうやって取り押さえるんだよ!?」三谷が直樹の襟をつかみ言うが
「力で何とかしろ」完全命令系だった……
三谷は直樹に殴りかかろうとしたが、パンツァータートルがタックルしてくる。
「力でっていわれても」アッキーが嘆いたそのとき。
ガシッ……桜井がパンツァータートルの首をかかえ、タックルを受けきろうとし たが低速になっただけでとまらない……
「さすがさっちゃん、元相撲部」花木がほめたが
「す、相撲部言うな……」なぜか櫻井はパンツァータートルから手を放し、顔を 覆い隠してしまった。
どうやらなにかトラウマがあるようだった。
顔を覆い隠してる櫻井にパンツァータートルはタックルしようとしたが、今度は 三谷が受け止めた。
「何やってんだよ櫻井……お前も手伝えよ……」
「おう……」
しぶしぶ櫻井も受け止めることにした。
「よし、後はコウがやってくれれば……」直樹は上を向いていった……
「うおりゃぁぁ!!」コウは包丁一本で突き進み、そして
「心臓見っけた」コウはにやりと笑い
「これで終わりだぁ」
心臓に深々と包丁を突き刺した。
「疾風滅殺斬り!!!」
なぞの必殺技でコウは心臓をずたずたに切り裂いた。
そして……バタン……パンツァータートルは倒れた。
「死んだ……?」アッキーが恐る恐る言う。
パンツァータートルは、口から血を吐き倒れている。
しかも口の中から声が聞こえる。
「おーい、出してくれー」コウだった。
「大丈夫か? コウ」花木とアッキーががコウを口から引きずり出した。
コウはその場で腰を下ろした。
「助かった……」
そこへ直樹が後ろで手を組み近寄ってきた。
「やってくれると信じてたぞ」
「直樹テメェ……」
コウは切れかけたが、そんな気力も無かったので黙っておいた。
「あー疲れた」
櫻井と三谷がパンツァータートルの甲羅の上で寝転がっている。
「どうだ、このクソガメ」
櫻井が甲羅をコツンと叩いた瞬間、ギロッとパンツァータートルの左目が開き、 暴れ始めた。
「さっちゃんが叩いたら、生き返った」花木が目を大きくして言うが、
「んなわけないだろ! まだ生きてたんだよ」櫻井が軽く払った。
「さっちゃん、受け取れー」
コウが手に持っていた包丁を投げてきた。
「ナイス、コウ」
櫻井が包丁を取ろうとしたとき
「とうっ」
横から三谷が包丁を奪った。
「とうっじゃねーよ、とうっじゃ……」
櫻井のテンションがガクンと下がった。
そんな櫻井を無視して三谷は
「トドメだ!!」そう叫び、パンツァータートルの頭に包丁を突き刺した。
パンツァータートルは目が飛び出て、血反吐を吐き、大きな音を立てて倒れた。
完全に死んだようである……
「正義は勝あぁぁぁつ!!」三谷、二度目の雄たけびを上げた。
「やっぱすげぇぜ三谷」直樹。
「ありがとう、三谷」アッキー。
「ナイス、みた君」コウ……が三谷を褒めちぎる。
また櫻井は壁にもたれて座り、落ち込んでいる。
「ちくしょう……またこのオチかよ」櫻井が嘆きまくっていると、また花木がヒ ョコッと現れた。
「よくがんばった」
ただそれだけだったが櫻井はうれしかったらしい。

2006/6/25 up

 第十一章へ



Back  Contents  Top


[PR]動画