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旅館殺人

 ……ここはおなじみ三谷達の通っている中学校。
 今日もまた教室でぼんやりしている三谷達のところへコウがやってきた。
「お〜い、みた君たち〜」
 コウが叫びながら現れる
「どうした?」
 何気ない三谷の返答。
「今度の連休、僕の知り合いの旅館に行かない?みんなで」
 コウは三谷、櫻井、沖野に返事を求めるように聞く。
「べつにいいよ。俺は。お前達もいいよな?」
 三谷が桜井たちに問い掛けた。
 二人とも「いいぞ」と言ったので旅館にいくことになった。




 ――当日――


「じゃあお言葉に甘えて」
「いえいえ〜、いいんですよ〜、たまたま空きがあっただけですから」
 親達が挨拶している。
 みんな親が都合悪くて子供だけで行くことになったのだ。
 なんと運のいいことだろうか。
「コウは行ったことあるのか?」
 沖野が不安そうに聞く。駅にきたときからずっとこの調子だ。
「1回だけある…らしいよ。3歳ぐらいの頃に」
 コウらしい落ちだ。
 沖野は不安そうな顔をますますこわばらせた。
 どうやら迷う気がしてならないらしい。
「そういえば旅館ってどこにあるんだっけ?」
 櫻井はいまさらな質問をした。
「あれ、言ってなかったけ。岩手県の『いわや』ってとこ」
「何にかけてあるのか気になるな」
 櫻井がぼそっとつぶやいた。
 こういうとき突っ込みそうな三谷は、ここに車での車の中で酔ったらしい。ぐったりしている。
「みた君はほんとに酔いやすいね〜」
 コウが心配そうにつぶやいた。
「そろそろ電車がくるぞ」
 三谷の父親さんがつぶやく。
 そのつぶやきに答えるように電車がきた。
「じゃあいってくるね〜」
 そう言ってみんなは電車に乗り込んだ。


 電車での旅は相当長かった。
 一本で最寄の駅にいけるというものすごくいい場所にあるということで、乗ってからの沖野はものすごく騒がしかった。
 突然トランプを持ち出してみんなでやったり、
(だがすぐに三谷は酔ってしまい戦線離脱した。もちろん酔い止めは飲んでいたはず)
 しりとりしようと言い出したり、
(このとき三谷は眠っていた)
 あいうえお作文作ろうと言ったり。
(このとき三谷に関することについていろいろお題になったが本人は知る余地もない)
 あれこれやっているうちに4,5時間たったようで、駅に到着した。
「ここが岩手県か〜流石に雪がすごいな〜」沖野が感想をもらす。
「だね〜。じゃあそろそろ歩こうか」コウが先頭にたって歩き出す。
「歩くのかよ…」目をさすりながら三谷はつぶやいた。駅に着く直前にたたき起こされてまだ眠いようだ。
 櫻井も声には出さなかったが、いやそうな顔をしている。


 ――到着――


 …かれこれ30分
「ここが『いわや』だよ」コウが立派な家、いや旅館を指さしていった。
大きさは一戸建てが5個も6個もくっついているようだった。
坪にしたら200以上あるだろうか。2階建ての古風な家だった。
「すげ〜」みんなの感想だった。
中に入ってみると
そこは和風の玄関だった。
「いらっしゃい」
そういって元気そうなおばさんがやってきた。
「皆さんがコウちゃんの友達だね。初めまして、私は雲水 染子っていうの」
おばさんはみんなの名前は聞いてるよ、といって1文字も違わず当ててしまった。
「名前を知ってるなら挨拶だけでいいですよね。よろしくおねがいします」
三谷は先頭にたって挨拶した。櫻井と沖野もそれに習った。
「じゃあみんなの部屋に送るね。ついておいで」
そう言っておばさんは廊下を歩いていった。
 少し歩くとおばさんが立ち止まって、
「ここだよ」
 そう言ってふすまを開けて中に入れてくれた。
 そこはとても広い部屋で4人で使うのはもったいないくらいだった。
「6人家族がキャンセルしちゃってね。どうせだから来てもらおうと思って」
「ありがとうございました」
 コウが丁寧に挨拶をする。
「いいよ、いいよ。コウちゃんを久しぶりに見ることができたし。それにしてもおおきくなったね〜」
 コウはおばさんよりも背が10センチくらい高かった。
 昔来たときとはものすごい差になっているに違いない。
「じゃあもう5時だから料理の準備しなくちゃね。今日は宿泊客、全員で宴会だからみんな7時ごろに2階に来てね」
 そう言っておばさんは部屋から出て行った。
「すごくいいところだね〜」 
沖野はさっきから感激しまくっている。こんなところ始めてくるのだろう。
「コウは中の構造大体知ってるんだよな」
三谷がコウに素朴な質問をした。
「うん知ってるよ」
「じゃあ案内してくれよ」
櫻井が三谷のせりふを奪い、言った。
「じゃあ、いこうか」
コウは荷物を置いて部屋から出て行った。
みんなもそれに続く。
「え〜っと、この棟が宿泊客用で…」
出たばかりのところでコウはこのような説明をして歩き出す。
次は入り口のあたりにきて、
「ここがカウンターとロビーでここにある階段を上ったところが宴会場だったと思うよ」
「じゃあ夜ご飯はこの上で食べるのか」
 櫻井らしいせりふを櫻井が言ったところでコウは次に歩き出した。
「ここがお風呂になってるよ。露天風呂になってるから後でみんなで入ろう」
コウはこの奥は宿泊客用の部屋があるだけといって部屋に引き返した。
「俺らも帰ろうぜ」
三谷は桜井たちに一声かけてあるき出だした。
「オウ」と、櫻井も言って歩き出す。
沖野は無言で周りをきょろきょろと見ながらついてくる。明らかに始めてきた感じだ。
部屋に着いたとき、まだ5時半ごろだった。
コウは外の景色を見ながらボケ〜っとしていた。
「一面真っ白だよ」
みんな窓から顔をのぞかせた。
高台に立っているらしく、周りが一望できる。
確かに村が真っ白できれいだ。
「この辺は屋根に工夫してあって雪でつぶれないように急なんだ」
コウが豆知識をいいだした。
櫻井と沖野は感心していたが、三谷は
「俺眠いからちょっと横になる。まだ酔いが少しさめん。飯になったら起こしてくれ」
と言って、ごろんと寝転がってしまった。
即座にコウは
「また寝るのかよ!!」
と、突っ込んだが
「いいじゃんか。べつに」
と、三谷に言い返されてしまったのでそこまでにして、じゃあ7時くらいに起こすねとだけ三谷に言った。
「う〜ん、三谷は寝ちゃったしどうしようか」
コウは真剣に悩んでいる。
しかし、そこに、
「俺もねるわ」
と、櫻井も横になってしまった。
「そんなに疲れたのかな〜」
沖野は不思議そうな目で二人を見ている。
沖野が暇そうだったので、コウは、
「少し外でも散歩しよう」
立ち上がりながら沖野を散歩に誘った。
 もちろん沖野は合意して、散歩に出た。
 沖野達は1時間ほど散歩して旅館に戻ってきた。
 まだ三谷たちは寝ていたので、起こして2階に上がった。
(三谷はすぐに起きたのだが、櫻井が十分ほどぐずったのでちょうど7時くらいに上がった)
 大きな部屋があって、人が集まっていた。
 真ん中に大きな机が3つほど置いてあり、机には料理が載っていた。
 しかし、料理の数は10個しかなかった。
 そこにおばさんがやってきて、
「お金持ちの人が何人分かの部屋を一人づつで取ったんだよ」
 おばさんはきれいな和服に着替えていた。
「あの人たちの名前はね…」
 そう言っておばさんは説明してくれた。
 それによると、
 料理の前に座っている男が『酒井(さかい) 英明(ひであき)』酒井商事というここらでは有名な会社の社長らしい。
 その隣に座っているひげの男が『野村(のむら) 泰造(たいぞう)』酒井商事の大株主だそうだ。
 窓の近くで話している女二人は、ストレートの黒髪が『酒井(さかい) 紀子(のりこ)』という英明の妻で、 隣の名古屋嬢っぽい髪型の人は紀子の友達の『近藤(こんどう) 真弓(まゆみ)』。
 一人若い男は酒井英明の息子の『酒井(さかい) 英和(ひでかず)』だそうだ。
「と、言うことでみんなを自己紹介してくるよ」
 おばさんは、おじさんたちのほうへ歩いていって、三谷達を紹介したらしい。
 英明という人が寄ってきて
「よろしく」と、手を差し出してきた。
 こっちもよろしくと言って、全員席に座った。
夜の宴会はけっこう楽しかった。
 社長関係ばかりだからビシッとするかと思ったら、気さくに声かけてくれたし、カラオケ大会もやって、ちゃんと参加したし、(沖野はもちろんへたくそだった)ご飯もおいしかった。
 終わったのは大体9時ごろだった。
酒を飲むかと思ったら誰ものまなかったのには驚いたけど、まあそんなことはどうでも良かった。
 部屋に戻った三谷たちは、
「俺と櫻井先に風呂は言ってくるわ」
そのせりふを残して三谷と櫻井はそそくさと風呂に向かって歩いていた。
「あの二人行動早いな」
 沖野は眠いのかぼ〜っとしている。
「じゃあもう少ししたら入ろうか」
 そんな沖野にコウはそう言って持ってきた本を読み始めた。
 
 
 ―――浴場―――
「露天風呂なんか入ったことね〜かも」
 三谷は腰にタオルを巻いて風呂につかる。
 もう頭と体は洗い終わっている。
 櫻井もすぐに風呂に入った。何しろ露天路しかないので風呂に入らないと寒いのだ。
「ったく普通の風呂も作ればいいのに」
 三谷はさりげにぐちった。
「そうね〜ちょっと寒いもんね〜」
 どこからか女の声が聞こえる。この声は紀子さんだ。
「…もしかして混浴なの」
 櫻井が真っ赤になっている。
「あはははは。違うわよ。ほら、ここに壁があるでしょ」
 声のほうに言ってみると、確かに壁があった。
 壁というのは、竹で編んだ木の境みたいなものだ。
「つくづくいやな作りしてやがる」
 三谷はまたもぐちっている。
「三谷〜そろそろ出ようぜ。のぼせてきた」
「そうか。じゃあ出よう」
 三谷は立ち上がって出口へと向かう。ここがかなり寒い。
 櫻井もふらふらと後をついてくる。
 風呂から上がって部屋に行くと沖野たちが本をよんでいたので、
「はいってこいよ。俺たちは旅館回ってるから」
 と、言い残して、また櫻井とともに廊下に消えた。
「あの二人はホント気まぐれだな」
コウはため息をつきながらつぶやく。
 そしてコウ達は風呂に入りに浴場に向かった。
 
 コウ達が風呂に入っている頃、三谷達は、
「こんなとこに監視カメラがあるぜ」
 なんと監視カメラを発見していた。
 なんとなく二人でポーズをとったりしていると、
 おばさんが来て、
「よくそこにあるのわかったね」
 といって、通り過ぎていった。
「そろそろあきたな」
 三谷がそういった後自分の部屋に向かった。
 三谷が部屋に向かい始めた頃、沖野達はすでに風呂を出ていた。
 ただ、コウが先に風呂を出て、沖野が1,2分送れて出てきたこと以外。
 コウは、ちょうど風呂にきていた英和さんと話していた。
「君も風呂に入ってたのか」
「ええ、英和さんはこれから?」
「ああ。ちょっとあったまろうと思ってな。」
 そこに沖野が風呂から出てきたので、話はそこまでになった。
 しかし、その直後、風呂のドアを開けて少し中に入った英和さんが
「うわああああぁぁ」
と、悲鳴を上げて飛び出してきた。
 秀和さんの目は焦点が合っていない。何かあると悟ったコウはちょうど服を着終わった沖野といっしょに風呂に入った。
 そこには野村泰三さんが浮かんでいた。
 手首が切られ、浴槽を真っ赤に染めて、浴槽の真ん中に浮かんでいたのだ。
 コウと沖野はその場にしゃがみこんでしまった。
「そ…そんな」
 コウと沖野は口を半開きで目を合わせる。
 ほとんど焦点が合っていない。
 そこに叫び声を聞きつけた三谷と櫻井がやってきた。
「う…流石にちょっときついな…」
 三谷と櫻井はそういったが、即座に風呂場を飛び出して、
「泰三さんが死んでる!!」
「救急車と警察に連絡!!」
 と、二人で叫んだ。
 旅館のおばさんは混乱しながらも警察と救急車を呼んで、風呂場にきた。
 その間に騒ぎに気付いたホテルに泊まっている全員が集った。
「そ…そんな」
 なきながら紀子さんが倒れこむ…
「いい人だったのに…」
 主人の英明さんもその場でうずくまっている。
 ほかの人も見たくないのか後ろをむいて口を押さえている。
 何分たったのかわからない
 おばさんが
「救急車がそろそろくるかもしれない」
 そう言って部屋を出て行った。
 三谷達も風呂場を出て、おばさんの後を追った。
「まさか…ここで人が死ぬなんて…」
 おばさんが不安そうにうつむく。
「おばさん救急車がきた」
 コウがおばさんの肩をたたく。
 救急車の後ろに警察もついていて、そそくさと中に入っていった。
しかし、一人だけえらそうな刑事が残って話を聞くためにおばさんに話し掛ける。
「大変ですが、話してください。おねがいします」
 警察の人はやさしい声でそういった。
 しかしおばさんは沈黙している。
「おじさん、俺たちが話すよ」
 三谷と櫻井は、叫び声が聞こえたから、近くにいたのでとっさに風呂に入ったら、野村さんが風呂場に浮いていた事を話した。
「そうか。じゃあ君達は、関係ないんだね」
 後方から暗い声が聞こえる。この声は英和さんの声だ。
「そいつは、泰三さんを発見する直前まで風呂の中にいたんだ。そいつが犯人に決まってる!!」
「本当かね。君」
 沖野は顔をこわばらせながら
 「確かにそうですけど…僕じゃありません!」
 最後のほうは叫んでいた。
「しかし…」
「警部…野村さんの死亡が確認されました」
 風呂の中からやってきた警察官が報告して、また中に入っていった。
「沖野君、詳しい話を聞かせてもらおう」
 そう言いながら、事務室のほうに向かって歩き出した。
「何でですか。沖野が何をしたって言うんですか!!」
 コウは声を張り上げた。
「まだ殺人と決まったわけではないし、自殺の可能性だって高いんだ。一応聞こうと思っているだけだよ」
 警察官はやさしい言葉でコウに言った。
 コウも納得したらしく、
 「じゃあ僕もいっしょに行きます。一緒に入っていたので」
 そう言っていっしょに事務室に向かった。
 そこに三谷が、
「オイ、おっさん。暴行振るったら許さないからな」
 と、度胸のある発言をして櫻井とともに部屋に戻った。
「元気な子達だな。君たちは」
 警察の人は苦笑いしている。
「じゃあ、少し話を聞かせてくれ」
 


 ――20分後――
 コウ達が部屋に戻ってきた。
早速三谷は、
「どうだった」
 と、質問した。
 コウと沖野は、
「いろいろ聞かれたよ」
 そう言ってその場に座り込んだ。
 三谷はまだ気になるらしく、
「どんな質問されたんだ」
 と、コウ達に聞いた。
 するとコウと沖野は話し出した。大体こんな感じだったらしい。


 事務室に入ったコウ達に椅子を用意してくれた。
 中に入ってまず、
「しつこいようだが、君たちはやっていないんだね」
 と、聞かれた。
「もちろんやっていません」
 こうははっきりと答えた。
「しかし、沖野君が出た直後に入ったら野村さんが浮かんでいたんだろう」
 と、正論を言ってきた。

「はい、確かにそうです。でも、野村さんは風呂場にはいませんでした」
 沖野はありのままを警察に話した。
 しかし、警察は、
「そんなはずはない、実際に中で亡くなったんだ。きっと君たちに見えないところにいたんだよ」
 と、あしらわれてしまった。
 その後はきっと自殺だということで部屋に戻らされた。
 

ということだった。
「結局何のためにコウたちに聞いたんだ」
 三谷はあきれているようだ。
「確かにね。それよりもう眠いよ。今日はもう寝よう」
 コウはそう言って布団にもぐりこんだ。
 三谷もそれ以上追求せずに、布団に入った。
 沖野と櫻井も布団に入ったので、三谷はぶら下がっているひもを引っ張って電気を消した。
 そして、4人は眠りについた。
 
 
 ――2日目――
 一番に目がさめたのは三谷だった。
 昨日のことが気になって起きてしまったのだ。
「自殺のはずがない…けど」
 三谷は考え込んでいる。外はすでに明るくなり始めていた。
「やっぱりおかしい。露天風呂に隠れるとこはないし。」
「でも、殺人かどうかもわからない…」
「おう、櫻井、起きたのか」
「ああ。あれはどう考えても変だろう」
櫻井も不思議がっている。
「大体、俺らがあそこにいたんだから入る暇さえもないはずなんだ」
 三谷は昨日の事を思い出しながら言った。
 そこに、おばちゃんが
「お〜い、みんな朝ごはんだよ〜」
 と、叫んだのでコウと沖野を起こして全員で2階に向かった。
 2階にあがるとまだ誰もきていなかった。
 机も運んでいなくておばちゃんが準備手伝ってくれ、といったので手伝った。
 朝ごはんはとても静かだった。
 死者が出たのに楽しむことはないのだが。
そこに警察から、
「自殺の可能性はなくなった」
 と、突然告げられた。
「どうしてですか」
 英明さんが当然の質問をする。
「それは…野村さんから睡眠薬が検出されたからだ。アルコール反応といっしょにな」
 全員は、呆然としてしまった。三谷達以外は。
「昨日、野村さんと話をしたりした人は正直に言ってくれ」
 警察官は強い口調で言った。
 しかし、その誰もが名乗りを上げなかった。
「睡眠薬は大量に出たんだ。あれならすぐに眠ってしまうだろう。なのに自分で手首を切るのは不可能に近い」
 警察はもっともな事を言う。
「とりあえず一人ずつ話を聞かせて欲しい。事務室前にきてくれ」
 そういって警察官は部屋を出て行った。
「おい、三谷やっぱり殺人だったな」
 櫻井は顔をこわばらせている。
「確かにそうだが……沖野がこのままじゃ最有力候補だな」
 三谷は悲惨な事を言う。
「そ……そんな、じゃあ、どうすれば」
沖野は完全にビビっている
「真犯人を探すしかない……だな」
 櫻井が言った。
「でも動機がなければ大丈夫じゃない?」
 コウが安心させるために言う。
「まあ確かにそうだが……」
「さあ、君たちも早く」
 さっきとは違う警察官が呼びに来た。行ってないのは三谷たちだけだったようだ。
「行こう」
 三谷は先頭にたって階段を下りていった。
 

――取調べ――
三谷と櫻井はすぐに返された。
 死亡推定時刻のとき監視カメラの前で遊んでいるのが確認されたからだ。
 コウと沖野は……やはりすぐには返されなかった。
 でも、きりがないと見たのか警察は30分ほど質問して返してくれた。
 しかし、やはり犯人は見つからず持ち物検査をすることになった。
 コウ達は特に何ももっていなかったのですぐに返された。
 三谷と櫻井ももともと疑われていなかったのですぐに返してもらえた。
ほかの人たちの持ち物は何かわからないが、つかまっていないところを見ると特に何も持っていなかったらしい。
その後は部屋に戻って待機ということになった。


――捜査開始――
部屋に戻った三谷たちは早速会議を始めた。
「やっと殺人だと認めたな」
 三谷が言った。
「ああ、でも誰もつかまらないな」
 今度は櫻井が言う。
「このままだと沖野が疑われる可能性があるぞ」
 コウが沖野を心配して言った。
「この事件、俺たちで解決するしかないな」
「ああ、じゃあ早速情報収集だ」
櫻井と三谷はすでに張り切っている。
「でも、情報収集って何するの? 」
「警察は何も教えてくんないだろうから、自分達で探そう」
 三谷の決心は固そうだ。
 櫻井も
「じゃあ、まず風呂場に言ってみよう。何かわかるかもしれない」
 といって三谷と同時に立ち上がった。
 コウと沖野も立ち上がって、部屋から出て行く三谷たちについていった。
 風呂場に到着していろいろ調べてみたが、特に異常はなかった。
 その後、何をすればいいかわからず、結局部屋に戻った。
「おい、ほんとに何もなかったか」
 三谷がみんなに聞く。
「う〜ん、特に何もなかったよ」
 コウが三谷に言う
 全員成果はなった。
「じゃあ次は…2階だ」
 三谷が突然言い出した。
「二階なんか関係ないぞ」
 櫻井が講義したが、
「さっき警察が話してたんだけど、宴会の後誰も野村さんを見てないらしいんだ。だから2階に何かあるような気がしてさ」
 三谷が言いながらたちあがった。
 3人はそれに従った。
 2階に上がってみると、机はきれいに片付いていた。
 おばさんが片付けたらしい
「ちょっと待て、なんかおかしくないか」
 普通の部屋だが、突然三谷が言い出した。
「何が変なんだ?別に何にも変じゃないぞ」
 三谷は譲ろうとしない。
「そうか、机だ。机がないからだ」
 三谷は謎が解けたようだ
「だからおばちゃんが片付けたんだろ」
 コウは当たり前という顔をしている
「違うよ、朝準備したときは窓のとこにあっただろ」
 そうなのだ。朝は窓のとこにあったのだ、だがいまは部屋の隅に立ててある。
「そういえばそうだが、それが何かあるのか?」
 櫻井はもっともな事を言う
「……なんもないけどさ」
 三谷も深くは考えなかった。
結局何も見つからず、またもや部屋に戻った。
「はぁ、何も見つかんないな」
 沖野がため息を漏らす
「まだだ、何かあるはずなんだ」
 三谷はまだ粘っている。 
 ほかの3人もあきらめてはいないようだが、
「警察に任せようぜ」
 と、コウが言い出した
しかし三谷は、もちろんのごとく
「いやだ、もう一度風呂を見てくる」
 といって出て行った。
 櫻井も
「俺も行くぞ」
 といって部屋を出て行った。
 もう日も高くなってきている。11時ごろだろうか。
 風呂場に着いた三谷と櫻井は早速調べ始めた。
 と、そのとき屋根の上から突然水が落ち始めた。
「何でここだけ水が?」
三谷は櫻井に問い掛ける。
「といが壊れてるんだ」
確かにといが壊れていた。手前側に曲がっている。暖かくなって雪が溶けて、水が落ちてきたのだ。
「おい、雪の積もり方がおかしくないか」
 櫻井が叫ぶ、三谷も確かにきづいていた。
「上に行こう」
 そう言ってみたには、走り出した。
 櫻井も何とか三谷についていった。
上についた三谷たちはすぐに窓を探した。
 問題の窓はすぐに見つかった。謎の跡が雪についていたのだ。
「間違いないな、ここから落としたんだ」
 三谷は、すがすがしい顔をしている。
「でも、誰が犯人なんだ」
「それは……」
三谷も櫻井も疑問だった。流石にわかるわけがない。
「いったん、部屋に戻ろう」
 二人はいったん部屋に戻って、コウ達に報告した。
「すごいな、お前達」
コウは素直に感心したが、
三谷は、
「だめだ、まだ犯人はわかってない」
と、言う。
「じゃあもう一度状況を整理したら」
 と、珍しく沖野がまともな事を言ったので、みなはそれに従った。
「じゃあまず俺らがわかる範囲でアリバイだな」
三谷は基本的なことから始めた。
「おばちゃんは違うな。俺らといっしょに監視カメラに移ってるはずだし」
「英和さんも風呂場であってるし、第1発見者だしね」
「紀子さんと真弓さんもちがうよ。風呂場にいたもん」
沖野が言った。
「まだいたんだ、あの人たち」
「アリバイが俺らでわからないのは英明さんだけだな」
三谷はいった。
少し沈黙が流れた
「でもまだ決めつけるには早いぞ」
 櫻井が言うと、三谷は
「誰も犯人だとは言ってないだろ、警察に聞くか本人に聞いてみようぜ」
 、ということで場所は変わって事務所前、
「本当にきくの」
 沖野が突然弱音をはきだした
「ここまで来たらやるしかないだろ。教えてくれなかったら本人に聞くさ」
三谷はそう言いながら事務所に入っていく。
 数分たって三谷は事務所から出てきた。
「アリバイはあるらしい。俺らにはいえないけど。だってさ」
 三谷はまだ満足していないようだ。
「じゃあ本人に聞きに行くか」
 櫻井が言いながら歩き出したのでみんなであとをおった。

英明さんの部屋に行き、自分は廊下を歩いていたら、染子さんがきて少し立ち話をした
あと、自室に戻った途端君たちが叫んだので、見に来た。
ということだった。確かにアリバイはあった。
「と、言うことで、全員アリバイがあるな」
 三谷は落ち込みながら言った。
「もう一度上に行ってみよう」
 コウが階段の近くで言ったので、みんな逆らわずについていく。
 数分探したが、特に手がかりは見つからなかった。
「やっぱ何にもないな〜」
 三谷はついに疲れてきたようだ。
「そういえばそこに窓の鍵が落ちてたよ」
 沖野が突然言い出した。
「どこに!」
 三谷は叫んでいた。
「そのストーブの後ろ」
 沖野はストーブの後ろのあたりでしゃがみこんだ。
「でもこんなとこにあっても手がかりにはならないんじゃない?」
 コウは一般的な意見を述べた。
 みんなもそれに一致して、少しストーブを見てそこを離れるつもりだったが、三谷が、
「おい、この糸……」
 といって鍵を持ってきた。ここの窓の鍵は差し込むタイプの鍵なのだ。
ちなみに窓のあき方は外開きである。
「何でそんなとこに裁縫(さいほう)用の糸がついてるんだろう?」
 コウが言うと、三谷と櫻井は二人同時に
「これだ!!」
 と、叫んだ。
「何がこれなの?」
 沖野が当然の質問をすると、
「このストーブの中よ〜く見てみろよ」
 三谷が指さすストーブの中を見てみると、裁縫用の糸がファンに絡まっていた。
「これであの窓を開けたんだな」
 櫻井も得意げに話している。
「じゃあ、アリバイがあっても犯行は可能って事?」
 コウも頭がさえてきた。
「そういうことだな。沖野、ついてこれてるか」
 櫻井は突然沖野の悪口を言った
「う〜ん、なんとか」
 本当について来れてなかった。
 まあそんなことは気にせずに、
「じゃあ、また幅が広くなったじゃんか」
 コウががっかりして座り込んだ。
「そんなことないぜ。もう犯人はすぐそこだ。凶器が見つかればいいんだが」
 といったところで、突然したの階が騒がしくなったので、みんなでいってみると、なんと凶器が発見されていた。
 警察の話では、店の裏に落ちていたらしい。なぜ今まで見つけられなかったのかは不明だが。
「凶器も見つかったな、じゃああとは糸を持ってて、昨日あの部屋に最後まで残ってた人が犯人だ。」
 三谷はそこまで言いきった。
「でもとりあえず報告は明日にしよう。1日だけまってやろうぜ」
 三谷の気まぐれがまた始まった。
 

 その日は、警察の捜査も特に進まず、難航していた。
 

―――次の日―――
「じゃあ、そろそろ聞きに行こうか」
 三谷はやる気が戻ったらしい。付き合わされるほうは大変だろう。
「おう!!これでちゃんとつかまるといいけど」
 櫻井はまだ心配している。
「大丈夫だって。きっと」
 コウは安心しているようだ。
「……」
沖野は何も言わない。


「警察のおじさん、俺達もう少しで犯人わかりそうなんだ。協力してよ」
 三谷が警察に言うと、いままでとは違い、
「本当か、教えてくれ!!」
 といってきたので、三谷は気分よく、
「一人は二階にきて、後は温泉で待ってて」
 といった。
 
 
―――解決編―――
「もういいぞ、やってくれ」
 警察がしたから怒鳴った。
「最後の仕上げも、協力してくれたのでできました。ありがとうございます」
 コウが頭を下げる。女の警察官なのだ。
「君たち、よくこんなのわかったわね」
警察も驚いている。
「じゃあ、やるぜ」
 三谷の一声で装置が動き出した。
 その装置は、今日の朝突然三谷が作ろうと言い出したものである。
 まず、布団を丸めて、問題の窓におき、それを机で押し付けて固定する。そして窓の鍵とストーブのファンに糸を巻きつけておく。ただし糸はなかったのでさっきもらったのだ。
 この状態にして、ストーブをつけると、鍵がストーブのファンで巻き取られ、窓が開き、机によって押されている布団は、屋根の上を転がっていき……
「お、落ちてきました!!」
 下に落ちるというわけだ。
「ちなみにこのとき、睡眠薬を使ったんだ。」
三谷が説明する。
「じゃあ手首を切ったのは?」
 警察がこんどは質問する。
「それは眠らせたあと、手で握った雪だまをわきの下にはさんだんだ。そうすると血がとまるだろ。その状態で手首を切った」
「だからここには血が残らないのね。そしてその証拠も消滅する。よくわかったわね」
 警察も感心している
「おい、みた君そんなこといつ気がついたんだ?」
 コウも質問した。
「ああ、上から落とされたとわかったときくらいかな〜。わかってたって言うか、そうじゃないかと思ったの方が近いかも」
 三谷が答える。櫻井も顔を上下に振っている。この男もそこできずいたに違いない。
「じゃあ、ここに残ってた、上に、裁縫道具をもっている近藤真由美さんが怪しいのね」
「うん。そうだよ。でも動機はわかんないから違うかもしれないよ」
 最後に三谷は弱気な発言をした。
「いえ、動機はみんなあったのよ。あの人の動機は借金。ものすごい額があったそうよ」
「なら、うなずけるね。じゃあそろそろかえろっか」
コウが帰る宣言をしたが、
「その前に腹減ったぜ」
 と、三谷と櫻井が言った。




―――プロローグ―――
「結局あれはどうなったんだ」
 三谷がいう、あれから1週間ほどたった頃だ。
「うん、と、あのあと少し問い詰めたら自白したんだって」
「ふ〜ん。結局中途半端に帰った気がするもんな〜」
 櫻井が言う。
「まあいいじゃん。事件は解決したし」
「ねえ、最後ぐらい沖野出してあげようよ」
「けっこうでてると思うぞ」
「しかたないな〜まあアイツが一番つらかっただろうしな。俺らは楽しめたけど」
 三谷と櫻井は笑っている
「お〜い、沖野〜」
「沖野なら風邪で休みだろ〜」
「そうだったな。そういえば。じゃあこの辺で終わるか」
「結局出番1番少なかったのは沖野だね」
「ちょっとまったーー」
沖野がはしってくる。
「じゃあこの辺で」


―――END―――


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