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 序章


 ゴポ……
 静寂のみが支配する闇に、音がした。
 ゴポ……ゴポ……
 だんだんと音が大きくなる。

 ゴポ……ゴポ……ガシャンッ!

 ガラスのような物が割れる、高く、大きな音響く。

 ざぁぁぁぁぁぁ……

 水のような液体が流れる音がし、程なくして止む。
 闇の中に1つの人影があった。
 その人影の手にあるのは、銀にきらめく――刃――。
 人の形をした、人であらざる物は動き出す。
 己に与えられた使命、殺戮を行うために――



第1章 メンバー集結


 20XX年、普通の中学生の櫻井(さくらい)裕成(ひろなり)三谷(みたに)勇仁(ゆうじ)は、今夜のパーティーの相談をしていた。
「今夜の沖野の誕生日パーティーに呼ぶのはいつものメンバーでいいな?」
 三谷が言うと櫻井が
「いいんじゃね」と相槌(あいづち)を打つ。
「じゃあこれでいくぞ。みんなに伝えるか」三谷がそう言うと二人は立ち上がって歩いていった。
「まず高田(たかだ)直樹(なおき)でも誘いに行くか」
「…そうだな」またも櫻井が相槌を打ち直樹のもとへ向かった。
「オイ!! 直樹!!」
 と、三谷が呼ぶと、
「……さっさと来いダサク〜〜〜」
 小声で櫻井が言う。
「なんか言ったか〜?桜井く〜ん」今、来たばかりの直樹。
「うおっ!! 何にもいってない何にもいってない……」
「ふ〜ん……んで、何?」
「今夜カラオケで、沖野の誕生日パーティーするから来い」三谷が言うと、
「えぇ〜……なんで俺が?」嫌そうに直樹が言う。
「お前に反抗する権利はねぇ!!」強引に三谷が取り決める。
「はぁ〜!?」と、直樹が口を開く。
 ということで高田直樹を誘うことに成功?
「え〜と次は、日影(ひかげ)旭寛(あきひろ)いくか〜」
「……あぁ、そうだな」3回目の相槌を櫻井が打つ。
「といっているそばからアッキーはっけーん!」三谷が叫ぶ。
「おお、本当だ〜ついてるなぁ」上機嫌で櫻井が言う。
「おーい、アッキーちょっとこーい!」三谷がアッキーを呼び止める。
「な〜に〜?」アッキーがニタニタして近づいてきた。
「今夜カラオケで、沖野の誕生日パーティーやるから来いよ」と、三谷が言うと、
「何で俺が行かなきゃいけないんだ〜?」と、アッキーも嫌そうに言う。
「さっきも同じようなこと言われたような……まあいいやとにかく今夜こればいいの。絶対来いよ。」またも強引に三谷が言う。
 すると、
「……わかったよ。じゃあ今夜ね」あっさり了解したアッキー。
「よし! 説得完了。次は花木(はなき)宏明(ひろあき)だな」三谷が言う
「……ああ」櫻井はまたも相槌である。
「相変わらず無口だな〜」三谷がグチっていると、
「お〜い、さっちゃーん!」手を振りながら花木宏明が出現した。
「お!! いいところに来た。今夜沖野の誕生日パーティやるからカラオケに集まれよ」
 ほかの二人のように嫌な顔をするかと思いきや、
「わかった。じゃあ今夜ね」あっさりOKした花木は、どこかに走り去ってしまった。
 花木が走り去ったあと櫻井は
「お〜い、俺に用事あったんじゃね―のか?」と言ったが、しゅうへんに花木の姿はなかった。


 そして1日の授業が終わり部活も終えて、ここはカラオケBOX……


「△○□☆〜♪」沖野が歌っていた。
「お前下手だな〜」三谷が言う。
「確かに下手だ」沖野のパーティなのにみんなが言う。
「……俺、帰ろっかな〜」沖野がふてくされて言う。
「せっかくお前のために来てやったんだから帰るなよ!!」と、三谷。
「お前のせいだろーが」沖野が半分冗談で半分キレかかって言った。



第二章 殺人鬼、現る


 そんなこんなで時間は過ぎ、夜10時。
「あぁ〜今日は笑えたな〜特に沖野の歌」と、三谷。
「うるせ〜!」みんなで笑いがおこる。
 しかし、突然……
「うわぁっ!!」沖野が叫ぶ。
「どうしたぁ?」アッキーが目の前を見た途端、気絶してしまった。
 そして、みんなが、アッキーの見た方を見ると、無残に切り刻まれた男の死体が……
 こんなときにもかかわらず、冷静な櫻井は冷静に(無口なだけかもしれないが)死体に近づいて、脈を測った。
「コイツ……死んでるぞ」普通に言った。
 すると、暗闇から足音が聞こえた。
 それを聞いた、三谷が、
「ヤバイ! 早くどこかに隠れるんだ!」と、叫ぶ。
 みんなも、気付いたのだろう、とっさに身を隠した。一人を残して…
 それは、たった今、気絶したアッキーである。


 隠れたあと、沖野はつぶやく。
「あ……アッキー忘れた」
「…………」
 一緒に隠れていた直樹と花木は呆然としてしまう。
 ちなみにこのとき、5人は左右の小道に分かれていた。
 左は、直樹、沖野、花木。
 右は、三谷、櫻井である。
「う〜〜ん……なんとかアッキーを助けないと」と、沖野。
 少しの間が空き、直樹が言う。
「あ、そうだ。でも、成功するかな〜」
「なに〜? あんまり無茶はしたくないぞ〜」と、花木。
「かなり賭けなんだけど、俺たちが大声出してアイツの注意をひきつけて、できるだけ遠くに逃げるんだ。そのとき向こうに隠れてる桜井と三谷がアッキーを助けてくれれば……」
 直樹が言った。
「おいおい……それって俺らがかなりやばいじゃん」と沖野。
「でもアッキーを助けるにはこれしか……」下を向きながら直樹が言った。
「しゃーねーな。向こうに助けろって伝えないとな」と、沖野。
「じゃあ俺らがアッキーを助けろって叫びながら逃げればいいんだな」
 花木がひらめく。
「そうだな。それできずいてくれないと俺たちがやばいもんな」と直樹。
「よーし!! やってやるぞ!!」3人が小声で気合を入れた。  その頃、三谷と櫻井は、
「アッキー置いてきちまった」三谷が言うと
「あ〜〜あ……」櫻井が無関心な声を出す。
「助けないといけねぇな」三谷が言うと
「でも、アイツいるしなぁ」櫻井は、まじめに考え始めた。
 と、考えているとき、突然
 直樹が三谷を指差し叫ぶ。
「アッキー助けて、反対方向に逃げろ!!」
 花木が
「死ねぃ!!!」と、言いながら、殺人鬼の頭に石ころをぶつけた。
 殺人鬼は、花木達の方向を向き、歩き出した。
 それを見た、花木達は、
「うお〜〜! 来たぁ!!」と、叫び、暗闇の中へ、走っていった。
 しばらくして、三谷が
「そろそろ、いいな……」と、言い、アッキーに駆け寄った。
 櫻井は、アッキーの体を揺さぶり
「起きろ、アッキー」と、言ったが、反応なし。
 それを見ていた三谷は、アッキーの頬をつねりながら、
「起きろ! 腰抜けめ!!」と、言った。
 すると、アッキーは、悲鳴を上げながら飛び起きた。
 三谷は、アッキーにいきさつを話した。
「もう、気絶するなよ?」三谷が言った。
 アッキーは黙り込んだ。
「わー……無言かよ」櫻井が言った。
 すると三谷が
「直樹達は、どうせ中学校にでも逃げたんだろ」と、言った。
 それを聞いた、櫻井は、
「じゃ、中学校に行くのか?」と、言った。
 アッキーは、
「ああ……気絶しそう」と、言った。
 櫻井と三谷は
(ホント、役立たん奴だ……)心に思った。
「ま、まぁ、とにかく中学校に行くか」三谷が言ったが、櫻井は
「ここからだと小学校のほうが近くねぇか?」と、反発した。
 すると、三谷は
「黙って、俺について来い! 置いてくぞ!!」強引に言った。
 それを聞いて、櫻井は、
「……はい、わかりました」渋々言った。


 その頃、殺人鬼に喧嘩を売った花木達は…
「ハァ〜……しつこいぞ、アイツ……」と、花木。
 すると、沖野が、
「直樹、お前、食われろ!」と、言った。
 それを聞いた直樹も負けじと、
「テメェが食われやがれ!イガグリ野朗!!」と、怒鳴った。
 また、沖野が、
「黙れ! マッシュルームが!!」意味のないやりとりをしていた。
 しばらくして、直樹が、
「……こんなことしてると、余計に疲れるな。」と、言った。
「ひとまず、さっちゃん達と合流しないと……」と、花木。



第三章  VS中学校! 作戦α(アルファ)始動!


 場所は、変わって中学校……
「あ〜……鍵、開かねぇや」櫻井が言った。
 すると、三谷が石の塊を持ち、
「どけ〜〜〜い!! ぶっ壊すぞ!!!」石を振り下ろそうとする。
 すると、すかさず、
「まてぃ!!!!!」櫻井が、止めに入った。
「まだ完成したばっかの学校を壊す気か!?」櫻井が、怒鳴ると、
「まだ、途中やりだから、いいじゃん」へりくつを言う三谷。
 ……だが、櫻井は、
「あ……そうか……なら、いいや」と、納得してしまった!
 そして、
「いくぞ!!」と、言いながら、三谷は、石を思いっきり窓にぶつけた。
 ガシャー―――ン!!と音を立て、ガラスは、粉々に砕け散った。
 櫻井は、鍵を開けた。
「よし、俺らの教室に行くか」そう言い、教室へ向かった。
 そして、真っ暗な教室で、三谷達は…
「アイツは、一体、何なんだ!?」
「こういうときは、やっぱ、警察か?」櫻井が冷静に言った。
 すると、三谷が、
「だな。沖野達の死を無駄にする訳には、いかん(まだ、死んでねぇけど)」

「うわぁぁぁぁぁ〜!!しつこいぞ、アイツ〜!!」走りながら、沖野が言う。
 花木は、無言でひたすら逃げる!! すると、直樹が、
「よし、アイツを中学校に誘き出そう」そう、つぶやいて、
 全力疾走で、中学校へ、向かった。


「警察に行くつっても、沖野達まだ逃げてんだよなぁ」櫻井が言った。
「あ〜……忘れてたわ〜……」三谷が言うと、
「うわぁ……お前、マジで忘れてたのか?」櫻井がツッコんだ。
「と、とにかく、チャイムでも鳴らしてみるか」誤魔化す三谷だが、
「……職員室、開かねぇかもよ?」と、言う、櫻井。
「う〜〜〜〜ん…………」櫻井と三谷が考え込んでいると、
「助けてくれぇ〜〜〜!!!」沖野達が、半泣きで走ってきた。
「あ〜……沖野達、来たぞ〜」櫻井が言うと、
「教室の電気をつけて、沖野達に知らせるんだ!」三谷が叫ぶと、
 いきなり、教室の電気がついた!
「うお!? なんで電気が勝手についたんだ!?」三谷が驚く。
「あっ………」櫻井が何かに気付いた。
 電気をつけたのは、アッキーだった。
「アッキー、ありがとう(てか、いるの忘れてたわ)」と、櫻井。
「流石(さすが)だ、アッキー(ある意味で……)」三谷も言った。
 それを聞いた、アッキーは、
「どういたしまして。俺の事、忘れないでね……」悲しそうに言った。
 三谷と櫻井の魂(ソウル)が共鳴した(?)…


 ……運動場……
「あっ、教室の電気がついてるぞ」直樹が気付く。
「櫻井達がいるんだな」沖野が言うと、
 三谷が教室の窓から顔を出し、
「お〜い、そいつを学校の中で、やっつけるぞ〜」と、言った。
 それを聞いた、戦争馬鹿の櫻井は、
「おっ、やっつけるとな!? よしよし……」無気味に笑いながら、ベルトを締めた。


 そして……
「隊長!準備完了しました!」櫻井が三谷に言った。
「えっ、俺、隊長?」三谷が聞く。
「んっ、三谷、隊長でアッキー二等兵ね」笑いながら言った、櫻井。
「……まぁ、いいや。とりあえず、作戦、立てるか」三谷が言った。

 その頃、運動場では…
「三谷、あんな事、言ってたけど……あいつ、俺らを忘れてるのか?」と、半ギレ直樹。
「あの櫻井(デブ)、後で、殴ってやる……」と、言った、沖野。

「ただ今より、作戦αを開始する!!」ノリノリの三谷。
「了解!!!」いつもの2倍のノリで櫻井が言った。
「ということで、放送室であいつらに作戦のこというぞ」三谷が言った。
 すると櫻井は「ちょっとタンマ……職員室とか鍵かかってるぞ?」と言った。
「いまさらもういいだろ!! ドアも壊したし!」三谷は開き直った。
 そして職員室に向かうことに。
「やっぱ鍵かかってるわ〜」ドアをガチャガチャさせながら櫻井が言う。
 すると、三谷は、
「よし……」と、言い、職員室のドアを蹴り飛ばした。
 バコン! と、音を立て、ドアは、外れ、中に入れるようになった。
「結構、簡単だな」足をさすりながら三谷が言った。
「俺は、知らねぇぞ」櫻井は、何度もつぶやいていた…
「とりあえず来たけど、何するの?」アッキー二等兵が言った。
「う〜〜〜ん……」櫻井と三谷は、考え込んだ。
 櫻井と三谷は、作戦αと、いう作戦名しか考えてなかったのだ。
「とりあえず、直樹に作戦αって言えば、わかるわ……多分」
「暇な時、よく話してたからな〜」櫻井がフォローした。
「めっちゃ、気になる……」アッキーは、目を大きくして言った。
 そして……
「おい、この、放送機の使い方、知ってるか?」と、三谷が聞くが、
「知らん」ほぼ同時に櫻井とアッキーが答えた。
「はぁ〜……しゃーねーな。俺の勘でいくぜ!!」三谷が言うなり、
 テキト―に、スイッチをいじり始めた。
「ホント、大丈夫かよ? お前もやったことねーだろ」櫻井が言うが、
 三谷は、すでに放送の仕方がわかったらしい。
 「結構、簡単だな」スマイルで言う三谷。
「はやっ!」櫻井とアッキーは、同時に言った。
『え〜……テス、テス、お〜い、直樹、聞こえたら返事しろ〜……聞こえねぇのかな?』
 放送をしていた三谷は、櫻井に叩かれた。
「アホか! 聞こえても返事できるわけねぇだろ」
「冗談に決まってるじゃん」笑いながら言った三谷。
 次は、まじめに、
『おい直樹! 今から作戦αをやるぞ! まさか忘れたとは言わせねぇぞ』三谷は言った。
「これなら、わかるな」
「俺、ワケわからんじゃん」アッキーはグチった……


 その頃、直樹達はまだ走っていた。
「いい加減、限界だぞ……」沖野が弱音を吐いた。
「たしかに、そろそろまずいな……」直樹も吐いた。
 ちなみに花木は、沈黙したままだ……
 そこに、さっきの放送が流れてきた。
『お〜い、直樹、聞こえたら返事しろ〜』と、流れたので、直樹は、
「聞こえてるぞ〜〜!」と、叫んだが、
『……聞こえねぇのかな?』と、流れた。
 直樹は、自分が馬鹿馬鹿しくなり、後で三谷を殴ることを心に決めたのであった……
「直樹、アホだな〜」沖野が言った。
『おい直樹!今から作戦αをやるぞ!まさか忘れたとは言わせねぇぞ』
 まじめな放送が流れた。
「ダーちゃん、作戦αって何?」花木が聞くが、
「え〜と、知るか」と、冷たく答えた。
「あ〜……作戦αって何なんだよ、三谷め……」半ギレ沖野がつぶやいた。
 と、そこに、
『もし、直樹がわからんといかんから説明しとくか』と、作戦内容を話し始めた。
『お前らは、アイツともうしばらくランニングでもしててくれ。そのうちに、俺らは、4階の理科室でいろいろ罠を作ってアイツを撃退するという内容だ』
「……初耳だな」直樹が言った。
『じゃ、そういうことで、もうしばらく走っててくれ。じゃ〜な……プツン』
 放送が切れた。
「三谷は、俺達のことを何だと思ってるんだ……」ため息を吐きながら言った直樹。


「よし、理科室へ行くぞ!!」三谷が張り切りながら言った。
「了解!!」櫻井が言って、理科室へ来たが…
「あ、鍵ないや……」頭を押さえながら、三谷が言うと、櫻井が嫌そうな顔をした。
「……取りに戻るか?」
 すると、アッキーが暗闇から現れ、鍵を差し出してきた。アッキーの無気味な姿を見た二人は……
「ぬあっ!? びっくりさせるな!」櫻井は、心臓が止まったなどと言っている。
「おお、アッキーさりげにすげぇ」三谷は褒めながら鍵を受け取り、ガチャッと理科室のドアを開けた。
「作戦α準備にかかれ!!」三谷が大声で言うと、さりげに櫻井がささやいた。
「で、なにするんだ?」
「な、なにかいいアイディアがある奴、手を上げろ」苦し紛れな三谷。
 ピッと手を上げた櫻井の顔はいつもより輝いて見えた。
「まかせなしゃい。こういう時は、俺でしょ」自信たっぷりの櫻井は二人に命令を出し始めた。
「まず、ありったけのエタノールとマッチを集めろ」二人は、うなずき理科室をくまなく探し始めた。……そして、三谷が大量のエタノールの入ったボトルを2,3個持ってきた。
「で、こんなに何に使うんだ?」三谷が首をかしげて聞いた。
「この教室ごとアイツを吹き飛ばすのさ〜」櫻井は、爽やかに言ったが、
「俺に散々、学校壊すなって言っといて自分はいいのか!?」当然のごとくキレる三谷。
 だが、櫻井は、
「もう壊したし、いいじゃん」即答だった。
「キャラ変わっとるぞ。櫻井……」反抗できない三谷。
「マッチみっけ」存在を忘れかけていたアッキーが言った。
「よし、そろったな」櫻井は片方のドアから廊下まで垂らしていった。
「はい、導火線完成」櫻井がそう言うと、三谷は、なるほどと言わんばかりに大きくうなずいた。
「さ〜て、ガスを充満させるか」そう言うと、櫻井はガスバーナーをいじり始めた。
「さっちゃんそんなことできるの?」アッキーが驚いて目を大きくみひらいた。
「おう!!中二のときガスバーナーの実験やったことあっただろ? あの時ガスの元栓を閉め忘れてドカンといきそうになったんだよね〜(実話)」櫻井は笑いながら自慢げに言った。
「お前って奴は……まあいいやさっさと作業するぞ」三谷は苦笑いしながら言った。
「よーし!!ガスOK教室から出るぞ」
 そう言い廊下に出た。
「どうやってアイツ教室に入れるんだ」三谷が聞くと、櫻井はポケットからゼラチンを取り出した。(なぜ持っているのかは今のところ不明) 「コイツで足を滑らせる」櫻井は自信たっぷりだ!!
 そしてゼラチンをドアの前にまいた。
「よしアイツをここに誘き出すぞ」三谷は命令を下した。
「アッキーはここで待ってろ」三谷はアッキーに言うと、アッキーはうなずき、壁にもたれて座った。
「櫻井お前は来い」
「俺は走るの苦手だ」
「……こい」
 櫻井の言葉を無視して三谷がいい、櫻井は渋々ついていくことになった。
 

「あいつら理科室で何かやるっていってたな」イライラしながら直樹が言う。
「あのデブぜってー殴る」沖野はこぶしを固めた。
 すると向こうから三谷と櫻井が走ってきた。
「理科室であいつふっ飛ばすぞ」櫻井がにこやかに言った。
「はぁ〜?お前頭イカれたのか」沖野が言った……ボコッ―――ぐあっ
 沖野のいったことに腹をたて右フックをかました。
「貴様!! 何しやがる!!」キレた沖野がいったが、
「あ〜ん?殴りたくなっただけじゃ」フツーに言い放った。
「き、貴様…殺す!」沖野が殴りかかろうとしたそのとき、
 廊下の向こうから声が聞こえた「ガァァァアアアアア!!」
「チッもう追いついてきたか……」直樹が言った。
「よしよし、理科室に誘導するか」櫻井がにたりと笑った。しかしかなりつらそうだが。
「この借りはいずれ返す……」沖野が小声で言った。
「おいおい早くしないとあいつに殺されるぞ」櫻井が立ち止まっている沖野に言うと、
 沖野は顔をしかめみんなで理科室に向かった。


「ハァ……ハァ……疲れた……」息切れの櫻井が言った。
「後はアイツがくるのを待つだけだ」三谷がしゃがみこみながら言った。
 すると殺人鬼が暗闇から姿をあらわした。
「お、来たな。ゼラチンで転ばねーかな」櫻井がわくわくしている。
 殺人鬼はゼラチンの上まで来たが、滑りそうで滑らなかった。
「……滑らないか」三谷が悔しそうに言う。
 するとにやりと笑いながら櫻井が
「いまだ!! アッキーそいつにタックルだ」暗闇を指さしながら言う。
三谷と櫻井以外のみんなが「は?」という顔をしていると、とつぜんアッキーが半泣きでタックルしてきた。 
 威力はなかったものの、そのタックルとゼラチンで足を滑らした。
「よし!! 理科室にぶち込めー」
 みんなで力をあわせて、殺人鬼を理科室に閉じ込めた。このとき三谷はさりげに頭を蹴飛ばしていた。
 そして櫻井はポケットからマッチを取り出した。
「ただ今より新校舎を爆発させマース」
 そう言うと同時にマッチに火をつけた。
「新校舎よ……さらば」
 マッチをエタノールの上に落とした。
 火はみるみる理科室に向かうが、「あ!!」櫻井、三谷、直樹の三人が同時に叫ぶ。
「どうした?」沖野が聞くと同時に、直樹が
「俺をこんなとこに連れてきやがってお前馬鹿!!」櫻井に向かって怒鳴っている。
 その言葉で花木は感づいたが、沖野とアッキーはまったく気付かなく、みんながあせっている中、首をかしげていた。
「みんな!! 伏せろー!」三谷が言うが、火はガスに引火して伏せるまもなく大爆発が起きた……みんなはガレキに埋もれて生きているのかどうかわからなかった。



 第4章  変異


 全員――X−001も含めて、瓦礫に埋もれていた――が、ガレキの中から三谷が出現した。
「いってぇ…あの馬鹿が…ってかみんな無事か?」
 無傷で言った。なんて頑丈な体なんだろうか。
今度は櫻井がガレキの中から出現し
「……すまぬ」と、頭から血を流しながら言った。
「他のやつらは?」
 櫻井は立ち上がりながら言った。
 すると、櫻井の足元から、音が聞こえてきた。それは、
「あ゛〜……あ゛〜」
 という音を出している。
「なんだ? この音は?」
 櫻井がつぶやく。その直後、音のした方…足元を見てみると、櫻井は沖野を踏んでいた。
「あ〜、わりぃ沖野。気がつかなかったわ」
 笑いながら櫻井が言った。
「そんなことより…はやく……足……どけろ…デブ…」
「あぁ? よく聞こえないな〜」
 櫻井は足をどけないばかりか、ぐりぐりと沖野の頭を踏みつけ始めた。
「いてててて……わかった……俺が悪かった……助けてくれ」
「もちろんじゃないか、我が友よ」
 ニヤリと笑いながら、櫻井は言い、三谷といっしょに沖野を救出した。
「何が友だよ……」
 沖野がつぶやいた。
「もう一度埋もれたいのかい?」
 にこやかに櫻井が言うと、
「……冗談に決まってるだろ。そう冷たいこと言うな櫻井」
 悲しそうに沖野が言った。
「つーか花木と直樹とアッキーは!?」
 三谷が叫んだ。
「まだ埋もれてるんじゃね?」
 普通に櫻井が言った。
「埋もれてるんじゃね?じゃねえよ!!手を貸せガレキをどかすぞ」
 腕まくりをしながら三谷が言った。
 櫻井と三谷は、せっせとガレキをどかしていく。
「さっちゃん…」
 かすかな声が聞こえてきた。
「お、花木見っけた。」
 櫻井が言うと、すぐに花木を引っ張り出した。
「おお、花木。生きていたか。沖野はどうでもいいが心配したぞ〜」
 ニコニコしながら櫻井が言った。
「ひでぇ……」
 沖野が小声で言った。
「おーい、アッキー見つけたぞ〜」
 三谷が引っ張り出すと、例のごとくアッキーは気絶していた。
 アッキーにつずいて直樹が出現した。
「くっそー…左手が動かん…」
 直樹が腕をたらしながら言った。
「…たぶん骨折してるぞ、それ」
 三谷が腕を少し見て言った。
「どうでもいいけど、なんかその辺動いてる気がするんだけど…」
 花木がガレキを指さしながら言った。
 その指の先を見ると、瓦礫が徐々に上がってきている。
「まさかあれで死んでなかったのか……ははは……どうしよう」
 櫻井が壊れかけていた。
「うわ! やべぇ! おい、アッキー起きろ…くそっこいつ肝心なときに。おい、みんな走るぞ! アッキーは俺が担ぐ!!」
 三谷が叫んだ。
 全員がうなずき、直樹と沖野を先頭に走った。
「おい、どこに行く!?」
 沖野が直樹に話す。
「う〜ん……とりあえず公民館にでも言ってみるか」
 直樹が言う。
 そしてその頃、三谷と櫻井が最後尾にいた。
「くっそーアッキー重過ぎる」
 三谷が息を切らしながら言った。
「ぜーはーぜーはー」
 櫻井は既に限界がきているようだ。
 そこに遠くの方から、
「ガアァァァァ」
 という声が聞こえてきた。
 その声に反応したのか、突然アッキーがおきだした。
「ん…あ〜…ここはどこ? 天国?」
 わけのわからない事をつぶやいた。
「お!! アッキー起きたか!! さっさと降りろ、重いんだよ。とりあえずあいつから逃げろ」
 三谷がアッキーを落としながら言った。
 櫻井が後ろを振り向くと、火だるまになった殺人鬼がこちらに向かって歩いてくる。
「げ……あいつ不死身か!?」
 三谷が驚く。
「見ろ! 様子が変だ」
 櫻井が指をさしながら言った。
 スプリンクラーが作動し、殺人鬼の体の炎が消えた。
 殺人鬼の体はかなりやけどを負っている、
「ガ、ガアァァァァ!!」
 いきなり殺人鬼は血反吐を吐きながら苦しみ始めた。
「……何が起こっているんだ!?」
 三谷が言うと、
「……変異している」
 バイ○ハザード好きの櫻井が微笑みながら言った。
「そんな馬鹿な!?」
 と、驚く三谷。
 殺人鬼の体は一回り以上大きくなり、両手のつめが異常に発達した。
「コ……ロ……ス」
 殺人鬼がしゃべった。
「お、しゃべれるようになったじゃん」
 のんきに櫻井が言うと、
「馬鹿か!? しゃべれるようになったって事は知能が発達したって事だろ」
 三谷が怒鳴る。
「死にたくないよぅ」
 アッキーがぐずり始めた。
「アッキー…先に公民館へ行くんだ」
 櫻井が言うと、
「あいつは俺たちが足止めする!!」
 と、三谷が言った。
 アッキーは礼を言うと、すぐさま走っていった。
 櫻井と三谷はいった。
「って、かっこつけたはいいが…」
「俺らかなりやばいんじゃねえの?」
 マジであせっていた。
「おい、これどうすればいいんだ」
 と、櫻井。
「くそっ直樹がいたらおとりにしてたのに」
 三谷が言うと、突然、殺人鬼が右手の鋭い爪で刺すように攻撃してきた。
 その爪は三谷の肩のあたりに向かってきた。
「うおっ」
 といいながら三谷がしゃがみ、その爪は三谷の服の肩の部分を裂いた。
「あっぶね〜もう少しで当たるとこだった」
「もう油断するなよ、とりあえずどうにかして時間を稼がないと」
 と、言いながら櫻井は周りを見渡すと、工事中のショベルカーが運良くおいてあった。
「おい三谷、あそこのショベルカー使えんか?」
 指をさしながら三谷に聞くと、
「使えるかな〜とりあえず行ってみるしかないな」
 そう言い、走っていき、ショベルカーに乗り込んだ。
 すぐさま櫻井も乗り込み、
「ラッキー! これ鍵がついてるぞ!!」
 三谷はショベルカーのエンジンをかけた。
「おい!! 鍵はいいけどこれ動かせるのか?」
 櫻井が不安丸出しで聞くと、三谷は、
「わからんけどやってみる」
 ごちゃごちゃと操作方法を調べている。
「なんとなくわかったぞ」
 三谷はいろいろなレバーをいじったりスイッチを触ったりしていると、ショベルカーは前に進みだした。
「ようし。ショベルのとこはここか。くらえ!!」
 殺人鬼にショベルを思い切りぶつけた。
 しかし殺人鬼は少しよろけただけで、ほとんどダメージはないように見えた。
「ガアァァァ……」
 殺人鬼は声をあげ、ショベルを爪で切り裂いた。
「やべぇあいつすごい力だぞ、こうなったらこいつごとあいつにぶつけてやる。1,2の3で横に飛べよ櫻井!!」
 そう言いカウントし始めた。
「1、2……3!!」
 三谷はレバーを傾け横にとんだ。櫻井もショベルカーから飛び出した。
「無事か櫻井!?今のうちに走るぞ、公民館に走れ!!」
 三谷は叫び、櫻井は三谷にオウと返事をして走り出した。


 そのころ、直樹、沖野、花木は走っていた。そして、いつのまにか櫻井達がいないことに沖野が気づいた。
「なぁ直樹、桜井達がいないぞ」
「え!! あいつらどこ行った?まあいいやとりあえず公民館だ。三谷がいれば大丈夫だ(と思う)櫻井もいるしなあいつらけっこうやるからな。学校ふっとばすくらいだし」
 と、高田。
 そんな事を話していると公民館についた。
「さ〜て、ついたのはいいけど中に入れないし、壊すしかないかな」
 高田が言うと
「それしかないね」
 と、花木も賛成した。
 そこへ半泣きになりながらアッキーが走ってきた。
「アッキー無事だったか」
 沖野がいった。
「おい、三谷と櫻井はどうした!?」
 直樹がとっさに聞くと、
「あの二人は、殺人鬼と戦ってるんだ」
 アッキーが答えた。
「戻ったほうがいいのか」
 花木は言うが、
「いや、あいつらがくる前に公民館に入るぞ」
 と、直樹が冷静な判断を下した。
 みんなが一斉に扉にけりを入れた"どごん"見事に扉を破壊した。
「よし! 中に入るぞ」
 その掛け声でみんな中に入っていった。


「ハァ……ハァ……しっ死にそう」
 と息切れの櫻井が走りながら言った。
「アイツ、変異したら足まで速くなりやがった」
 と三谷が言う矢先、目の前にヤンキーが現れた。
「おいガキども、金出せや!!」
 とヤンキーが言った。「ちっ、こんなときに……」櫻井が毒づいた。
「お……アイツ、追いついてきたぞ」
 と三谷は櫻井の袖を引っ張りながら言った。
 すると櫻井はにやりと笑い、
「お金あげるからあの人やっつけて」
 殺人鬼のほうを指さす。その指の方向を見たヤンキーは、バイクを置きっ放しにして走り去っていった。
「おいおい……逃げたぞ、あのヤンキー」
 と三谷が言った。
「しょせん、そんなものさ」
 とヤンキーのほうを見つめながら桜井が言った。
 ふと、三谷が気づく。
「っておい!!」
「なんだ?」
「のんきにヤンキー見てる場合か!? 後ろ見てみろ」
 三谷に言われ櫻井は後ろを見る。
「あっ」
 櫻井は殺人鬼の存在を忘れていた。
「早く逃げるぞ」
 三谷がバイクを起こしながら言った。
 櫻井はバイクの後ろに木刀があるのに気づいた。「おっ、ラッキー」と木刀を手に取った。
「お〜い、三谷〜木刀あったど〜」
 木刀を振り回しながら言った。と三谷は、
「貸せぇ!!」
 と櫻井の手から木刀をブンどった。
「コレ、借りるわ」

 と三谷が言った。それを聞いた櫻井は、
「ああ、いいよ……盗られるのは分かってたさ……ハハハ……」
 と落ち込んでいた。
「なにやってんだ? 置いてくぞ」
 と三谷がバイクをふかしながら言った。
 櫻井は三谷の後ろに乗って、
「なぁ、……三谷」
「どうした?」
「フツーにバイク乗ってるけど……お前、免許は?」
 と聞いた。すると、
「もちろんねぇわ!!」
 と答えた。
 櫻井が「ノォォオオオ―――」と叫ぶやいな、
「行くぜっ!」
 とバイクを走らせた。
 殺人鬼をぐんぐん引き離した。
「このまま公民館に突っ走るぞ」
 と三谷が言った。


2006/4/1 up
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